「真美、ほんとに本屋好きだね」
「なんで?」
「すごく楽しそうだから」

私は物心ついた時からずっと本が好きだった。幼稚園の頃はおばあちゃんの喉が枯れるまで絵本を読み聞かせしてもらっていたし、本の読みすぎで目が悪くなって小学三年生の時からずっとメガネをかけている。

本屋は好きだ。息を吸い込むと胸いっぱいに広がる新書の匂い。大きな本棚にぎっしり詰まった書籍。ライトノベルコーナーも、専門書コーナーも、全部好き。

「真美は、自分でお話を書いたりしないの?」
「え」
「楽しそうじゃない?」
ぎくり、として私は彼の顔を見た。彼はきょとんとして私の顔を見て、ふふ、と笑った。
「その顔、おもしろいな」
「おもしろいってなんだよー」
彼はまた笑うと、そろそろ行こう、と私の手を引いて本屋を出た。

昔からずっと、文章を書くことが好きだった

私の趣味は、物語を書くことだ。まだ誰にも言ったことがない。
小説、エッセイ、詩――シチュエーションが降ってくることもあれば、言葉がポンと湧くこともある。

初めて小説を書いたのは、大学一年生の時。文字数にしたら七百字くらいで、とても小説なんて言えるものじゃなかったけれど、自分の脳内から溢れる言葉を文字にするのはとても楽しいことだと気が付いた。

私はTwitterで創作用のアカウントを作り、文字書きを趣味にしている人たちと繋がった。中にはイベントで一次創作の小説を販売している人までいて、私もいつか自分の本を作って販売してみたいと思うようになった。

私が文章を書き続けられるのは

プロットを作って、本文を書いて、校正して、インターネットのサイトに投稿する。私は世界中にごまんといる創作者の一人に過ぎないし、私みたいに文字書きを趣味にしている人なんて沢山いる。
そんな中でも私の作品を選んで、読んでくれて、中には感想をくれる人もいる。それだけで私はすごく嬉しくて、次はどんな話を書こうかな、なんて考え始めたりする。

私がこの趣味を人に言えないのは、自分に自信がないからだ。書店に売っている本を読んだり、インターネットに載っている記事を読んでいたりすると、どの文体も私よりはるかに上手い。人は人、自分は自分と割り切りたいところだが、私の職業は小説家でもライターでもないのでこれ以上の上達は見込めないだろうなと思ってしまう。

でも、一番大切なのは文字を書くことを楽しむことだろう。周りの文字書き仲間を見ていると、つくづくそう思う。

個人誌を作って誰かに読んでもらう。それが私の夢に

文字書き仲間と知り合ってから、私の密かな夢が決まった。そして今年の十一月、その夢が叶うことになった。イベントに出店して、自分の本を売ることになったのだ。
Twitterの友達が協力してくれたり、製本についての色々なことを教えてくれたりした。自分が描いた作品を、紙で読みたいと言ってくれる人が沢山いる。お話の続きを読みたいと思ってくれる人が沢山いる。

「真美の書いた文章、いつか読んでみたいなあ」
いつかそう呟いた彼の言葉に応えられるように、私はこれからも楽しく文章を書き続けていこうと思う。