私には隠しごとがある。マッチングアプリの男性に関してだ。
隠している、というと響きがあまり良くないが、私はアプリで会った男性のことをnoteというSNSで記事にしている。もちろん趣味でだ。記事といってもブログ程度である。
一体それに何を書いているのか、順番に説明していく。

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まず、タイトル。大事である。芸能人の誰似であるか、をタイトルに出来るだけ書くようにしている。つまり、具体性である。サラリーマン、と書くよりも田中圭似サラリーマンと書く方がぐっと距離が近づく。
同じ内容を想像するにしても、頭への吸収のされ方がずいぶん違うと思う。明確な映像と共に、読む人に内容が伝わる。
だから、男性と会う時は誰に似ているか、を書くために顔をよく見る。見ても思いつかない場合もあるので、その時は相手に聞く。似ていると言われることがない人も勿論いるので、その場合は諦める。
タイトルを付けたらその後は肝心の内容である。まず項目ごとの点数の一覧のようなものを書く。具体的に言うと、容姿星5つのような感じだ。
その後にそれぞれの項目について、きちんとその理由も書く。きちんと、というのもおかしな表現なのだが。点数だけでなく、それにエピソードが伴っている方が読んでいて面白いだろうと思うからだ。
最後に総評を書く。次もまた会いそうか、など。これで一連の流れはおしまいだ。会った相手にもよるが、書いてみると意外とそれなりの分量になる。

そもそもこれを始めたのは、何人に会えるか、というのを数えたかったからだ。たくさん会ったからといって何かあるわけでもないのだが、実験のような感じだ。人数が増えたらその先に、見えるものがあるかもしれないと思った。今のところ、見えたものはない、その兆しもない。
人間の脳なんて全ての瞬間を覚えておくことは出来ないから、私は記録している。大抵会った日の帰りの電車か、もしくは記憶が鮮明なうちに。そうでもしないと、すぐ忘れていく。

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まさか相手もそんなことをされているなんて思っていないだろう。相手の許可を得て書いているわけでもあるまい。言うなれば無許可である。
相手の本名を書いているわけではないし、色々と伏せてはいる。本人が読んだら、自分のことだな、とわかるとは思うが。私ももしかしたら、誰かの記事に登場しているかもしれない。

どんな相手でも、記事になる。そして面白かったり、変な人であればあるほど言い方は悪いがネタになる。あまり良い気分にならず帰路についた日でも、まあnoteに書けばいいか、と思えるのである。何か話したいことが起こった時、必ずしも相手がそれを聞ける状態にあるとは限らない。すぐに返事が欲しくても、かなわないこともある。
そういう意味でも、記事にすることは私の中で感情の整理や消化に役立っている。どこかの誰かが読んでくれるからだ。
でも、それ以上にきっと、私は私自身の頭の中を、感情を、可視化するためにこの作業を一度も欠かさずにやっているのだろう。ある種の儀式のように。

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先日、会った人数はぞろ目を迎えた。今のところアプリを退会する予定はないので、この記録がどこまで伸びるのか見ものである。3桁に到達したら、本にでもして出版しようか、と目論んでいる。勿論冗談だ。
これを読んでnoteが気になった方は、筆者の名前横の地球マークからサイトに飛べます。暇つぶしのお供にぜひ。