運命以外ありえないなと本気で思っていた。
話をすると楽しい、嬉しい。彼の苗字が好きで、書く字も発音もなぜか惹かれる。第一印象は声が良い、だった。
そんな彼に絵を貰った。あたたかくて、泣いた。大袈裟だけど、ひとりぼっちの私を照らしてくれた。

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初めて2人で出かけた時、今日の記憶だけで一生生きていこうと思えるほど楽しかった。居心地も距離感も丁度よく、会話も適度に途切れず、いつも通りの2人だけど少しふわふわして。

告白された日は、おなかの中からじんわりあたたかくなる嬉しさがあった。なんだか喜び自身が付き合えたことを大事にしているようにすら思えて、すごく嬉しかった。
初めて親に付き合っていることを報告できた人であり、付き合ったふたりにはいずれ別れが来て、その後は決して前と同じ関係に戻ることはできないとつよく思っていた私が、心の底から守りたい、ずっと大切にしたいと思える人だった。

そんなに好みのタイプではないというのもポイントだった。かっこいいというより可愛い、はしゃぐとすごく子供っぽいし、よく喋る。意外と拘りが強いし背もそれほど高くない。浮気した元彼と名前の発音が一緒なのも少し気になっていた。名前を呼ぶ度に思い出してしまうような気がして。

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でも、大事に育てられて来たのだろうなと思うくらい素直で、自分の意見がしっかりある。できないことをはっきり「できない」と言えることの誠実さ、そして不器用さが人間らしくてとても好きだった。
とにかく優しくて、存在があたたかい。そんな人に出会ったことは一度もなかった。

そんな彼と付き合って2年、お互いの変化もあり、付き合っているのが苦しくなってしまった。
「もっとラフで良いし、形に囚われる必要もない。周りにどう言われてもいい、お互いで関係は作っていくものだから。スキンシップもとりたいならとればいいし、これからも会ったり出かけたりする。信頼しているから相談もするし、連絡も今まで通り取る」
彼は淡々とそう言って、この人なりにすごく考えて、もうキャパオーバーなんだなと思った。まだ若いし、もっとお互い色んな経験を積んだ方が良いと思って、わかったと泣きながら伝えた。

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私たちはいつの間にか、保っていた距離がなくなって、土足で入りこんでしまうようになった。そこだけはごめん、選ぶ権利があると主張しても伝わらず、彼自身の幼さを許せずにいた。何回も話し合いという名の意見の擦り付け合いをして、疲れて、仲直りしてもまた喧嘩するんだろうなという安定していない日々を最後の方は過ごした。

『正しさ』は必ずあるけど、それが相手にとって受け入れ難いものだとしたら。主張することや間違っていると思うことを言う権利はある。
でも、色んな人がいて、心の使い方の癖がありやりたいことや気持ちを抱えて生きていて。その人の言葉の裏には本心を柔らかく伝えてくれたもの、その人自身の裏には育ってきた環境や基盤となる家族の考え方がある。そんな全く違った2人が一緒に生きていこうとするんだから、ぶつかって当然だ。

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あなた自身が未知の領域。
ほんの一面しか知らないのに、言われた言葉や見た態度で全てを知った気になって、相手のためという自分の中の優しさを押しつけることはできない。気がついたら私が、いちばん大切にしたい彼を追いつめていた。

付き合っていく上で、汚れていく自分と幸せになっていく自分を同時に見た。
彼がいることで私はすべて満たされる気がしたし、周りからお似合いだね、と言って貰えることが何よりも嬉しく、有頂天になって、SNSに載せることも、すべて承認欲求を満たすために彼を利用してしまっていたなと思う。

付き合っているというだけで、身内意識が強くなり、所有してる感覚ももってしまっていた。たとえ結婚していたとしても彼は彼で変わりはないのに。そして好きが依存に変わってしまっていた。
泣きたくなるほど純粋な気持ちを向けてくれていたのに、沢山の笑顔や優しさを貰っていたのに、私の根本の汚い心で接してしまって本当に申し訳ない。終わって当然だ。

望んでいなくてこうなったのであれば、これが運命だと思う。

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私は19年間ずっと、何かに影響され続けてきた人生を送っていたこと。それで良いと思っていたし、憧れる誰かの人生を真似することで、周りの評価も安心できた。他人の評価で生きるのはやめようと思った。何一つ自分の言葉で語ったものがない気がする。何も持っていない。こうして文を書き連ねていても、その自分に酔っているような気がして。

でも、自信がないなら自信がないなりに、その時の私100%で立ち向かいたい。そういう覚悟をもちたい。かっこつけず、素直にそのままの心を伝えたい。自分を信じて生きたいと初めて思うようになった。

また、彼と距離をおいたことで、周りの人をすごく大切にしたい気持ちがつよくなった。
今までは彼とその他という認識だったけれど、全部向けてくれる優しさは本当に当たり前ではなく、ひとつひとつをきちんと受け止めて、返せる人になりたいと思う。
そして、今私が見ている世界は私の主観で見えているということ。主観で見ている人間同士が一緒の世界で生きているということ。人と人とは違うということ。忘れないでいたい。

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私にとっては大革命のようなステップを踏めたのも、2年間ずっと傍で話を聞いてくれて、分からないなりに受け止めようとしてくれる彼の存在があったからだと心の底から思う。預けていた私を取り戻しつつ、新しい私にもなっていきたい。すべてが浸透するように生きたい。強く優しくなりたい。

この先のことは、全く分からない。
でも、また連絡出来たら、どこか行こうって誘いたい。同じ景色をみたい。「違う」ことを諦めじゃなく許したい、楽しみたい。大切なのはずっと変わらない。私を変えるきっかけをくれて、ありがとうと伝えたい。