休みのときくらい、自分に対してご褒美をあげよう。
そう決めたのは、一人暮らしを始めてから三か月ほど経った時のことだった。
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一人暮らしを始める前、母親から「食費は気にしないで」と言われていた。
しかし、その言葉に甘えきれない自分もいた。
元より、貧乏性だった私は、食費を切り詰める生活を送っていた。
スーパーで食べたいものを見つけても、値段を見て、財布の残金を思い出し、手を伸ばすのをやめてしまう。そんな生活を続けていた。
始めたばかりはアタフタしていた自炊も、三か月も経てば慣れてくる。
相変わらず凝ったものは作れなかったが、毎日同じものを食べる、といった生活は避けることが出来た。
しかし、どこかで消化不良なところもあった。どこで息抜きをすればいいのか、見失っていたのだと思う。食べることは昔から好きだった自分が、食事面で我慢をすることでストレスがかかっていたのかもしれない。
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ある週の土曜日、私は朝早くスーパーへと向かった。
前日は、酷く疲れていて、流石に寄り道するほどの気力は残っていなかった。
とはいっても、もうじき食料もつきそうだ。私は軽い朝食を取ってすぐ、仕度をしてスーパーに向かうことにしていたのだ。
土曜の朝ということもあって、店内に人は少ない。
店内には、まだ品出しが終わっていないプラスチックケースが辺りに積み上げられている。
そんな中で、ふとスーパーのスイーツコーナーの前で立ち止まった。
私のよく行くスーパーは、あまり大きな店舗ではなかったが、それなりにスイーツコーナーは広かった。シュークリームやプリン、ロールケーキやタルトなど。ありとあらゆる商品が棚に並んでいる。
目に止まったのは、モンブランだった。
新商品という案内が値段を書いてある隣についている。
私は、新商品だとか、期間限定、という言葉に弱かった。
今までは、どうせ野菜や肉のように食べなければならないというものではない、と購入を控えていたスイーツ類。
たまにはいいか、と私はそのモンブランに手を伸ばし、カゴに入れた。
昼食を作り、作り置きの分はタッパーに入れる。昼食分も盛り付けが終わり、タッパーを冷蔵庫に入れよう、と冷蔵庫の扉を開き、私は冷蔵庫の一角を占めるモンブランの存在を思い出した。
早いうちに、食べとこうか。そう思った私は昼食のデザートとしてモンブランを食べることに決めた。久々のスイーツ。どこか心は踊っていた。
スイーツを添えるだけで、いつもより少し量が多くなった土曜の昼食。満足感でいっぱいだった。そして私は、我慢しすぎるのもよくないんじゃないか、と気づいたのだ。
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それから私は週の終わりだけ、スイーツを購入するというルーティンを作った。スーパーの新商品を買ってみたり、少し遠いコンビニまでスイーツを買いにいってみたり。
息抜きとしては、小さなものかもしれないが、それでもいいリフレッシュになっていた。
貧乏性の私にとって、これくらいのご褒美が、ちょうどいいのかもしれない。