Yと巡り会ったのは、出逢わなかったかもしれないほどの奇跡に近い出会いだった。
職場が同じだったYとは、仕事終わりに飲みに行ったり、休日お互いの予定が合うとたまに二人でプライベートで出かける仲だった。
年齢はひと回りほど離れていたが、これまでの経験談を聞いたり、私がキャリアに悩んでいる時にアドバイスをもらったり、いつも頼り甲斐のある彼から刺激を受けていた。
未熟だった私が彼のためにできることは何もなかったが、私はいつも彼から沢山の情熱や勇気をもらっていた。
そんな彼は突然の転職とともに海外赴任へとなり、私たちの心の距離は一気に遠のいてしまった。

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お互いの趣味の話、仕事の話、そして人生経験、私がまだ経験したことのないような彼の苦労話まで、とても興味深い人生を送ってきた人の一人だった。
考え方や、物事の捉え方など、いつもネガティブ一直線な私にとって、彼の考え方はとても魅力的で、私の思考を180度覆してしまうような、そんな神的な存在だった。
彼が海外転勤と聞いた時は、驚くというより、ショックに近い感じで、何か長年大切にしてきたものを失ってしまったような、そんな感覚に陥った。
手の届かない遠くへ行ってしまった彼と過ごした貴重な時間を、私は一生忘れることはないだろう。
私とご飯に行った最後に会った日、彼は1冊の本をプレゼントしてくれた。
読書好きで、日頃から自己啓発本や小説を読み漁っている彼が過去に読んでグッときた本を私に紹介してくれたのだ。
今では私の“Bible”となって、私を励まし続けてくれている。

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“ソウルメイト”とは、本当にこの世に実在するのだろうか。
スピリチュアルな世界を信じているわけでも、宗教的な信仰を普段からしているわけでもない私だが、“ソウルメイト”の存在だけは、何か強く感じるものがある。

性別も年齢も違うのに、話が合うというか、趣味嗜好が似てるというか、お互いに何かに惹かれるものが、言葉にうまくできないものが、確かにそこにはあった。
誰もそんな存在を信じてくれなくたっていい。
唯一無二の私だけがその存在を信じ続けている限り、周りのみんながどう思ったって関係ないのだ。

誰しも、大切な人と行った思い出の場所・忘れられない思い出の味、儚くも、確実にそこに流れていた大切な時間。
この経験にこそ、私は今を生かされていると感じる。
そして、「この大切な時を密かに想うこと」こそが、私だけの記念日なんだとおもう。

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誰と何をしていても、「彼がいた」という、この事実さえあれば過去も未来も何だっていい。
またいつか、人生のどこかのタイミングで、「彼に巡り会えますように……」。
私は密かに「私だけの記念日」を祝福し、私は心の底からそう強く願うのだ。

今は久しく連絡も取らなくなったが、どこへ行って、何をしていても、いつも全力な姿の彼が私の目には浮かぶ。
「自分の選択次第で、人生きっとうまく行くよ!」と、いつも彼が励ましてくれていた昨日のことのように。