私は今、医療関係の職に就いている。社会人2年目。正直、この仕事が自分に向いているのか分からない。

私は元々、人と話すことも、要領よく動くことも得意ではない。小さい時から大人しくて、マイペースでおっとりした性格だった。
ただ人の役に立てることは好きで、医療関係の仕事をしていた両親の影響もあって、同じ医療の道に進んだ。
この職で働くことに対して不安を感じるようになったのは、学生実習の時からだ。初めて医療の現場に入って、この仕事の大変さを実感した。患者さんに合わせた会話スキルや機転の利いた返答ができる必要があったし、その場で即座に判断して行動しなければならないことも多かった。細やかさ、スピード感、瞬発力が求められた。それに加えて、当たり前だけれど、医療的な知識も日々習得していかなければならなかった。
口下手で、どんくさい私には、想像していた以上にハードで付いていくのがやっとだった。

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夢だった医療職。不安を感じながらも資格を取って就職したけれど、ずっとどこかで考えている。私はこの仕事を続けていくべきなのか。どんな仕事でも、「慣れるまでは大変だよ」ってよく言うけれど、この仕事はミスが患者さんの命に関わる。生半可な気持ちで務まる仕事ではない。

社会人1年目を思い返すと、覚えることが多すぎて、毎日訳が分からなかった。ひとつ覚えるとひとつ忘れてしまうくらいには苦労した。ミスを上司に指摘されることも度々あった。
2年目には一通りのことはできるようになっていたけれど、辞令を受けて、職場を異動することになってしまった。新天地で、また一からのスタートになった。
異動後の新しい職場の仕事に、私はなかなか慣れることができなかった。新しい環境にすぐに順応できるほど、私は要領が良くない。2年目なのに上手く動けない自分が情けなくて、家に帰って毎日泣いた。もう退職してしまおうと何度も思った。社会人としての義務感と、退職しても逃げ場なんてない現実から、重い腰を上げて毎日通勤していた。
自分は何のために働くのか、何を目的に生きているのか分からなかった。

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ただ最近、分かってきたことがある。何事も、初めから上手くできるわけではないということ。だんだん慣れてくるとコツを掴んで、上手くこなせるようになる。人それぞれ習得に時間差はあるけれど、何度も繰り返すことで覚えてくる。失敗した時の記憶や恥ずかしさも、大切だった。
巷でよく聞く「慣れるまでは大変」という言葉。そんな悠長なこと許されないと思っていたけど、自分自身が社会人1、2年目を通して体感したことで、「そういうものなんだ」と思えるようになってきた気がする。ネガティブな性格の自分だと、なかなか割り切れないこともあるけれど、自分の心を守るために、変なプライドも捨ててしまった。

割り切って考えられると、ずいぶん心が軽くなった。ミスをしてもよい、反省しなくてよいという意味ではない。必要以上に自分を責めて、卑下し過ぎなくてもいいのではないかということだ。自分で自分の心を守る方法を見つけられた気がする。

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月日が流れるのはあっという間で、もうすぐ3年目になろうとしている。この仕事は自分に向いているのか、続けていくべきなのか、答えは未だに出せないでいる。ただもう少し頑張ってみようと思う。
時間が経つと後から分かることもあるし、長い目でみると、まだ人生のほんの2、3年に過ぎないから。自分の心の守り方を学べただけでも、仕事を通して自分が成長しているのだと思いたい。
これからも悩んでも悩んでも、踏ん張って乗り越えていきたい。