特集:私だけの記念日

紅一点の職場で迎えた4周年。理不尽にもしぶとく立ち上がってきた

私だけの記念日

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10月になった。
職場のデスクに置いてある卓上カレンダーをめくると、10月22日に「4周年」とスマイルマークが書かれていた。
これは卓上カレンダーを新調した2022年1月に、当時の私が書いたもの。私は今の会社に勤めて、10月22日で丸4年が経った。
いつの間にか新卒で入社した前職での勤続年数をあっという間に越えてしまった。
Googleフォトを開くと偶然、「4年前の10月を振り返りましょう」というタイトルで4年前の今頃にGoogleマップで調べた会社の写真や東京スカイツリーの写真など、当時の写真が次々と表示され、つい私は見入ってしまった。

◎          ◎

4年前、好きだった前職を辞め、必死で職探しをしている中で今の職場を見つけた。
書類を送ると、本社のある東京まで面接に来てほしいと連絡があり、地方在住の私は緊張しながら飛行機に乗ったことを今でも鮮明に覚えている。そのまま採用していただき、次の週から本社で数日間研修を受けることになった。
本社での研修は覚えるべきことが数日間に詰め込まれていたから、初めて学ぶ内容に戸惑いはあったものの、前職と同じ業界だったから今までの経験も少しは役に立てるといいなと思いながら数日間の研修期間に臨んだ。

研修初日は少しだけ早く研修が終わった。私はその足で地下鉄で押上駅まで向かい、東京スカイツリーを見に行った。高校の修学旅行で訪れた時は建設途中で、完成後も一度も来たことがなくてずっと間近で見てみたかった東京スカイツリー。
ライトアップされた巨大なスカイツリーを30分ほど、一人でぼーっとしばらく眺め続けた。まさか研修で東京に来て、ずっと見たかったスカイツリーを今見ているなんて数ヶ月前の自分は思いもしないだろうな、何があるか分からないなぁ。

「今度こそ自分らしく働けますように、また一から頑張れますように」
大きなスカイツリーが背中を押してくれた気がして、10月22日のその日、また一から頑張っていこうと、自分に誓った。

◎          ◎

研修期間を終え、新設部署での勤務が始まった。
様々な部署から異動で配属された数名の男性社員と、女性社員は中途採用の私が一人。
働く女性は私一人ということと、ゴリゴリの体育会系の職場だというのは、この時初めて知った。
女性というだけで自分の仕事以外の雑用が当たり前のように追加されて、職場の空調も男性社員に合わせられていたから最初の頃はカーディガンとブランケットが手放せなかった。生理痛が凄く酷くて布団から起き上がるのもままならなかったある朝は、上司に「生理痛が酷くてお休みさせてください」のたった一言を伝えるのにもの凄いエネルギーを使ったし、仕事中に生理用品が入ったポーチを持ってトイレに行くのも、周囲に気を遣いながらあまり見られないようにこっそり行っていた。
職場の飲み会ではされたくもない質問も当たり前のようにされて、容姿や体形をいじられても入社したばかりの私には苦笑いでかわすしか術がなかった。

何度も何度も「辞めたい」と思ったけど、前職で心配と迷惑をかけてしまった両親の顔や、本社で私に熱心に指導してくれ、前職での話を真剣に聞いてくれた女性の上司、東京スカイツリーを見上げて頑張ろうと誓ったあの日の自分が、「あともう少しだけ、続けてみよう」と、踏みとどまらせてくれた。

◎          ◎

そんなある日、その日は生理前でPMSの症状が出ていたのかもしれない、前日に友人の楽しそうな職場の話を聞いたからかもしれない。いつものように仕事中に上司の1人から私をいじるような言葉を投げられた時、普段なら笑ってスルー出来るのに、その日は喉元がぐっと苦しくなって、目頭がじわっと熱くなった。
やばい、泣いちゃう。
急いでフロアを飛び出して女子トイレに駆け込んだ。私は目元を一生懸命タオルで押さえて涙が収まるのを待った。
きっと、今まで我慢してきたものがコップから溢れそうな水のようにいっぱいになって、無意識のうちにこぼれてしまったんだと思う。涙が落ち着くと、少しずつ冷静になれた。

女性というだけで、今まで私は何を我慢してきたんだろう。我慢することなかったよね。
女子トイレを出ると、いつも話しかけてくれる清掃のおばちゃんが私を心配して制服のポケットに飴を二粒入れてくれた。抹茶味の飴がすごく甘くて、元気になれた気がした。

30分ほどしてから赤い目のままフロアに戻った。
男性上司は少しぎょっとしていたけど、私はお構いなしに仕事を続けた。
その日から少しずつだけど、上司からいじられるような言葉を投げられた時には「傷つきましたよー」と反撃できるようになったし(内心「おめーに言われたかねーよ!」と悪態をつきながら)、生理の時も堂々とポーチを持って女子トイレに行けるようになった。

「女性だから」となめられ続けることに腹が立って、職場の誰も取れていない資格を独学で取得して、なるべく男女関係なく対等に働けるようにアクションを起こしていった。
少しずつだけど職場の空気も変わって、「女性社員」ではなく「わたし」として仕事を任せてもらえるようになった。

◎          ◎

だけど、完全に理不尽な思いをしなくなったかというとそうじゃない。
理不尽な経験をした時や悲しい気持ちになった時は、「職場どうなの?大丈夫?」と気にかけてくれる母に愚痴をこぼしたり、「いつも頑張ってるよね」と、話を聞いてくれる友人の言葉や当時付き合っていた彼氏にたくさん励ましてもらったりしたおかげで、これまでも何度もしぶとく立ち上がり続けてこれた。

10月22日の勤続4周年を迎えられたのは、私が挫けそうになった時もいつも味方でいてくれた家族や話を聞いて励ましてくれた大切な友人や当時の彼、清掃のおばちゃんや本社からいつも気にかけてくれる私を採用してくれた上司たちがいたからこそ。
そして、何度も辞めたくなってもしぶとく立ち上がってきた、これまでの私がいたからこそ。

入社してから思っていた以上に紅一点の職場は理不尽なことが多いことに何度も悩んで涙を流してきたけど、とりあえず今は置かれた場所で自分の出来る範囲で精一杯頑張りたいと思う。来年のことなんて分からないけど、とりあえず新調した来年の手帳の10月22日の欄には、「5周年」と書き込んでおいた。

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