私のこれまでの人生は、寄り道が多い。休日も、また然りだ。

週休が週末二日の場合、一日は外出し、もう一日は家の中で過ごすのが私のスタンダード。
外に出ようが、家に居ようが、「寄り道」が発生してしまうことがしばしばだ。

外出先は、美術館や博物館、映画館が多い。行きたい展覧会や観たい映画をチェックし、あらかじめ前日に予定を立てる。30分刻みでスケジュールを組み、可能な限り事前予約をしているため、予定通りきっちり外出を楽しむことができる。しかし、予定通りにいかないことも多々あるのだ。

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ある土曜日、とある展覧会に向かった。しかし、最寄駅で降り、展覧会の詳細を確認した時、私はその展覧会に入場できないことを知った。当日券目当てで向かったのだが、土日祝は当日券を受け付けないシステムだったのだ。
展覧会の情報をもっと早く、詳しく知っていれば……。

しかし、このまま帰るのはもったいない。近場の美術館を検索したところ、「行きたい場所リスト」に追加していた展覧会が近くで開催されていたのだ。予定を変更してそちらへ向かうことにした。
最寄駅に着き、その展覧会へ向かおうとしたが、地図上で気になる施設を見つけた。いわゆる郷土歴史館だ。今まで大きなミュージアムや展覧会に行くことが多かったため、ローカルな歴史館は新鮮だった。そして、予定をさらに変更し、先に郷土歴史館へ向かった。

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郷土歴史館に着いた。この地域の江戸時代の様子について紹介しているようだ。外見はこぢんまりとしていたが、入館してチケットを購入し、しばらく展示室を歩いて驚いた。江戸時代の街並みがリアルに再現されているではないか。川を本物の水で再現しており、時折、猫の鳴き声も聞こえる。文字通り、タイムスリップしたかのようなクオリティだ。

街を眺めていると、案内人のおじさんが声をかけてくれた。この建物はこういう目的で作られたとか、当時の生活の様子とか、展示案内のプレート以上の解説をしてくれた。私の素朴な質問にも答えてくれ、楽しいコミュニケーションを交わすことができた。これは大規模なミュージアムではできない体験だ。寄り道してよかった。

郷土歴史館を後にし、展覧会が開催されている美術館へ向かった。展示の内容は現代アーティストが発信する社会課題だった。正しいことの裏には負の感情が発生する、生きづらいからこそ声を上げてみるなど、自分自身と照らし合わせ、脳をフル回転させるくらい考えさせられる内容だった。
私がこうしてエッセイを書いているのも無意味ではないのかもしれない。寄り道してよかった。

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展覧会を出て、館内のミュージアムショップに向かった。散財はしないと決めていたが、その決意はなかったことになった。昨年発売され、買いそびれてしまった美術雑誌を発見してしまった。カートに入れた。

さらに店内を歩くと、小学生の時に大好きだった絵本がテーマの哲学本を見つけた。カートに入れた。
お会計は私にとってなかなかの値段だった。でも、寄り道してよかった。

この日はいつも以上に寄り道だらけ。でも、結果として想像以上に楽しめて満足だ。

寄り道は家で過ごす休日にも発生する。基本的に溜まっていた家事や読書をすることが多い。しかし、洗濯物をベランダで干している時に、風の気持ちよさや天気の爽やかさを感じると、ほぼ必ず思うのだ。「あ、散歩しよう」と。

散歩の目的地は大体決まっている。最寄駅より一駅先にある本屋。徒歩で片道約40分。程よい運動だ。
本屋では最低30分は過ごす。本を買うこともあれば、買わないこともある。その代わり、気になる本はアプリで検索し、お気に入りに追加する。何より、本がたくさん並んでいる空間が心地いい。図書館にも本は並んでいるが、勉強やお話会など、目的は様々。本屋にいる人は、買う買わないに関わらず本だけを目的に訪れる。この空間が好きだ。

決まった散歩コースでも、たまに寄り道する。コンビニの気になる新作スイーツの宣伝が目に入ったら迷わず購入するし、夕方時のパン屋は割引販売するからそこにも立ち寄る。いつも通りの散歩でも、何かしらの発見があるのだ。

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寄り道は私に思いがけない出会いと発見を与えてくれる。そして、日常生活に新たな彩りが溢れる。
私にとって、休日でも、人生でも、寄り道は大切なもの。次はどんなものと出会えるかな?