クリスマスが楽しいと思っていたのは、小学生のときまでだった。
何故ならクリスマスは家族と過ごすものだとずっと思っていたからだ。
何も考えずに枕元に親がくれるプレゼントや、いつもは食べられないチキンやお菓子が食べられるのが無邪気に楽しかった。

だけど中学生になってから、クリスマスは恋人と過ごすものでもあるということを知った。
「彼氏」がいつまで経ってもできない私は、クリスマスはいつも1人ぼっちだ。
11月ごろに入ると、お店や大型商店街は一気にクリスマスモードになる。
毎年恒例のクリスマスソングが流れて、街にはカップルの姿が嫌でも目に入ってくる。嫌だ、と思う。

25歳までに結婚出来なかったら売れ残りのクリスマスケーキだという言葉がある。
25歳になった昨年も、彼氏が結局出来なかった。
誰にも興味を持たれずに売れ残った私。

◎          ◎

私はまだクリスマスを恋人と過ごしたことが一度もない。
クリスマスは楽しいイベントだと考える人が多いかもしれないが、私にはクリスマスは地獄のイベントだ。
クリスチャンじゃないのになぜクリスマスクリスマスと騒ぐんだろうと思ったり、クリスマスを恋人や夫婦と過ごす日と決められていることが私を苦しめる。
恥ずかしくて、情けなくて人に言えないけど、私はずっと彼氏がいない。そして気軽に誘ったり、遊べる友達も今はいない。

街を歩くと、白いふわふわのファーのついたコートを着て、ヒールのブーツを履いた女の子が、彼氏だろうか、男性と仲良さげに手をつなぎながら歩いている姿が目につく。
私は蚊帳の外だと暗い気持ちになってくる。

クリスマスとなるとイルミネーションを見にいくカップルも多いだろう。
遠くの観光地のイルミネーションまで彼氏が運転してくれて、ドライブに行く。
無理しなくても、駅のイルミネーションを見てコーヒーを飲みながら、散歩しながらぶらぶらとイルミネーションを見に行くのもいいな。
夜にはいつもよりちょっと豪華なディナーを頼み、お互いを想って選んだクリスマスプレゼントを交換する。
女の子はネックレスなんてもらったら絶対感動するんだろう。
私が望んでいるクリスマスの過ごし方。

あの子の真似をしたくて、ファーがついたふわふわの白いコートを買ったが、それはクローゼットの奥に押し込まれている。

◎          ◎

毎年同じクリスマスソング。
毎年同じ気持ちになる。
みんなと同じになれない劣等感。苦しんでいる。
昨年はクリスマスソングを聴くと心の中がぐるぐるしてだんだん苦しくなって、すぐに店の外に出た。
家に帰って布団を頭からかぶってじっとしていた。

私が望むクリスマスの過ごし方とは程遠い。
何もかもうまくいかない自分が嫌だ。
焦りと、情けなさで泣きそうになる。

日本は独身者に対してけっこうシビアで厳しい国かもしれない。
「クリぼっち」とかいう言葉を聞いた日には涙が出た。笑いごとにしないでほしい。
自分は幸せかもしれないけど。
努力して望んでもその状態になれない人がいるんだ。

自分も自分を自虐したくない。
絶対に。
何でこんなに自分を嫌いにならなきゃいけないんだろう。
自分に価値がないと感じてしまうのだろう。

いつかそんなことを考えないほどクリスマスが楽しいと思えたらいいけど、そんな日がいつ来るのかは全く分からなくて、今はただただ怖い。