ちょうど先日、彼氏と同棲をはじめた。
ふたりとも「一緒に暮らしたいね〜」というタイプではないので、付き合って約4年、それぞれ一人暮らしを続けていたが、彼が職場を異動になったタイミングと、私の元の家の契約更新時期がちょうど重なり、一緒に暮らしたほうが、経済的にも、日々の生活的にもお互い楽になるのではないかという話に落ち着いた。
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そんなこんなで、いとも簡単に、一人暮らし生活は終わりを迎えた。
引越しを決めた時は、バタバタとして深く考える時間もなく、あまり実感もなかったのだが、よく考えれば、人生最初で最後の一人暮らし期間が、終わったかもしれないことに気がついた。
もちろんそうではない可能性もなくはないが、別れたり、仕事の都合がどうしても合わなくなったりしない限りは、同棲生活は続く。
いずれは結婚して、ふたりの生活、そしていつかは家族との生活が始まるだろう。
そう思うと、急に「自分だけの家」に「自分だけで」暮らす生活が終わってしまったことに、寂しさを覚えた。
マリッジブルーならぬ、同棲ブルーだ。
思えば、一人暮らしの日々は、自由で、楽で、とても充実していた。
自分の好きなごはんを作って、好きな時に食べて、好きな時間にお風呂に入って。
よれよれの部屋着で床に寝転がっていても、トイレの扉を開けたままにしても、深夜にカップラーメンを食べても、誰も見てない。
涙をこらえきれないようなつらい夜も、声を押し殺す必要なんてなかった。
なにより、他人の機嫌に左右されて、自分の心までざわざわすることがなかった。
どんなことがあっても一人になれる場所は、時にはオアシスで、時には防空壕だった。
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物心ついた頃からずっと、実家を出たかった私にとっては、憧れの一人暮らし。
そんな特別な生活ができる日は、この先もうないかもしれない。
「もうちょっと楽しんでおけばよかったな」なんて、今さら思う。
結婚した人が、「もっと遊んどきゃよかったわ〜」なんて言うのと同じだ。
でも。
この感情は、これからの人生、なにか暮らしが変わるたびに、きっと毎回やってくるんだろうな、と思う。
結婚するとなれば、「独身生活が終わってしまう」と思うだろうし、子どもができれば、「夫婦ふたりきりの生活ももう終わりか」ときっと思う。
そして、子どもが育って実家を巣立つときには、「家族みんなで暮らせるのも最後なのね」なんて思うんだろう。
人はいつだって、無い物ねだりだ。
他人どころか、過去の自分のことさえ羨んでばかり。
「あの頃に戻りたい」「前の方がよかったかも」なんて後悔したり、悩んだり。
それでも、同じ場所にとどまる居心地の良さを捨てて、自ら一歩前に進もうと思ったのなら、きっと前に進んだほうが、今よりもっといい未来が待っているかもしれないと期待したから。
同じ場所に居続ける未来より、一歩踏み出した未来にわくわくしたから。
だから、自分が踏み出した一歩を信じて、二歩目も、三歩目も、歩いていきたい。
ほんの少しの、さみしさと切なさを抱きしめたまま。