小さい頃から夢があった。小説家になることだ。
本を読むのが大好きで、どこに出かけるにも本を持っていった。
いつだって空想した。いつだって夢の中で生きている気分だった。
いつしか自分でもお話を書いてみたい、と思うようになり、毎晩夜遅くまでベッドの中で鉛筆を走らせた。
枕元には消しゴムのカスが落ちていたり、シーツに鉛筆の黒い跡が付いたり、連日夜ふかしをして、お母さんにはしょっちゅう怒られた。
でも、どうしてもやめられなかった。純粋にただただ、楽しかったのだ。
◎ ◎
でも、気が付くと私は文章を書かなくなっていた。
部活、受験、恋愛、と、色々な刺激についていくために、空想している時間が無くなったのだと思う。
いや、皆に馴染んで同調するために、自ら捨てたのかもしれない。
夢中になれることを手放してしまった、と気がついたのは社会人になって人生に疑問を持った時だった。
あれ、こうやって仕事ばっかりしている人生って、本当に私が望んだ人生だったんだっけ?
多忙な毎日、次のアポに向かうため早歩きで駅を歩いていた時ふと疑問がよぎった。
本当にしたかったこと、置いてきぼりにしたこと、心の底から楽しくてやめられなかったこと、私にもあったよな……。
もう一度文章を書く時間が欲しい、空想に浸る時間が欲しい、その一心で私は生活環境を変え、自由に文章をゆったりと書く時間を得た。
そこから書いて書いて書きまくった。
水を得た魚のように脳がフル回転し、言葉が次から次へと溢れ出た。
楽しくて仕方ない、という懐かしい感覚を思い出すことができて幸せいっぱいだった。
◎ ◎
ある日、私も小説家になりたい、と自分の作品を出版社に送ってみた。
何ヶ月かして自宅に手紙が届き、開いて見ると「不採用」の結果だった。
そんなに簡単に小説家になれるはずがないことは分かっていたので、「まあこんなもんか」と軽く受け止め、さらに一冊、さらに一冊、と、書いてはコンテストに応募することを続けてみた。
しかし、「不採用」の通知が届くばかり。
私の作品にはきっと、何かが足りないのだろうということだけは分かる。成長しなければ。自分が書きたいことが、どうやったら「これを世に広めたい」と思ってもらえるのか、考えなければ。
その一心で、今も書き続けている、でも答えは出ていないままだ。
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夢を叶えるために、勉強したり、練習したり、対策と傾向を練ったり、皆色々工夫して、努力していると思う。
でも、残念ながら努力は必ず報われるかというと、そうではないことを、29年生きてきて私は知ってしまった。
タイミングや運が結果に影響することだって大いにある。誰がずるくて誰が卑怯とかそういう話でもない。
でも、私は諦めない。
リベンジし続けたい。
なぜなら楽しいからだ。
この挑戦を楽しめなくなったら、その時がやめ時なのだろうと思う。
この貴重な「楽しい」という感情が続く限り、私は何度だって、何年かかったって、リベンジし続けたい。
結局、挑戦することの醍醐味って、結果がついてくるか否かよりも、挑戦することで楽しいと思えるというところにあると思うから。