就職して地元を離れ、関東に住む友人がいる。
彼女は大学の仲良しグループの1人で、恋愛観が少し似ていた。しかし、似ていたからこそなのか、彼女とはあまり恋愛の話をしなかった。
彼女よりも恋愛観がまるで違う友達と、討論のように語り合うことのほうが圧倒的に多かったし、記憶にも残っている。

コロナのこともあって、大学卒業後、一年に一度会うか会わないかくらいになってしまった私達は今、SNSで繋がっている。
そして、SNSを通して恋愛の話ばかりしている。学生時代の私達がそのことを知ったら、一体何をそんなに話すの?と驚くだろう。そして、共感しかない恋愛話も最初は楽しいが、長々とはできるまい……と不思議がるに違いない。

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具体的に私達の恋愛話の始まりをお話しよう。
まず、車を持っていない私が誰かと海や山へドライブをしたり、牧場や花畑、果樹園に遊びに行ったりした投稿をSNSに上げると、彼女から「誰と行っとんよ、男の人か!!」とDMが来る。
逆に彼女がテーマパークやお洒落なカフェ、レストランに行った投稿を上げると、私もすかさず「誰と行っとんよ、男の人か!!」と送る。

お互い、大体男の人である。
そして私達は近況を報告し合う。
さすが恋愛観が似ているだけあって、同じことに悩んでいたり、それをも楽しんでいたり……。とにかく2人とも話題が尽きない。

私達が延々と恋愛話を続けてしまうのには、大きな理由がある。
それは、学生時代と違って私達は日々、異なる舞台で恋愛をしているからである。私の恋愛は地方都市で繰り広げられるが、彼女の恋愛の舞台は東京である。恋愛観が似ていても、私と彼女の恋愛は少し違う。勿論、人が違うのだから違って当たり前なのだが、それ以前に「性質」とでも言うべきだろうか……、違うのである。

デートの場所も、相手や周囲が持つ恋愛や結婚に対する考え方も、出会い方も。
それによって、恋愛の向かう先も少し違う。
彼女から東京の恋愛について教えてもらう度に、私も上京していればこんな恋愛をしていたのかもしれないなあと考える。
何度も言うが、恋愛観が似ている故に私も東京にいれば、彼女のような恋愛をしている可能性は高い。

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今年、彼女の帰省のタイミングは大型の台風が直撃したので会えなかった。
しかし、しばらく会えていないことを忘れるほど、私達はSNSで繋がっている。
「フィー子のほっぺたに触れないね〜……」
前日のニュースを見て、彼女が残念がっていた。会って話をするよりも、SNSで実際の写真や映像でほぼリアルタイムで見るほうがお互いの近況がよく分かるし、補足説明はDMにて、といったところだろうか。
ビデオ通話もできるので声も聞けるし顔も見られる。触れることはできないが、恋人でもないのでそこまで触れる必要性も無い。

SNSで友達と会った気になっているなんて、上の世代の方々は寂しいことだと言うかもしれない。
だが、SNSで繋がっているおかげで、しばらく会えなくても決して疎遠にならない。バイバイの寂しさも軽減するし、実際会ったときのぎこちなさも無い。

地方都市で恋愛をする私と、東京で恋愛をする彼女。お互いの恋愛は、お互いに起こるかもしれなかった恋愛だ。
彼女がもし地元に残っていたら?
私がもし上京していたら?
可能性のあった恋愛を、私達はお互いのSNSで見ている。