初めての恋人と過ごす、初めてのクリスマス。

寒空の下、待ち合わせをした。
ぎこちない会話。揺れる前髪。
彼は私に、レモンティーをくれた。
冷えた指先に、ペットボトルの重みと熱が、じんわりと広がった。

公園のベンチで、私達はキスをした。
噂通りの、甘酸っぱい味がした。

何の変哲もないレモンティーだったけれど、彼が選んでくれたことが嬉しくて、私は飲み干した空のペットボトルを、クローゼットの奥にそっとしまった。

数ヶ月後、些細なことですれ違い、私達は別れた。
自分で振ったくせに、私は毎日のように泣いた。

翌年、一人のクリスマス。
私はコンビニで、レモンティーを買った。
まだ痛む傷跡に、レモンの酸味が沁みた。

それから私は毎年、クリスマスにレモンティーを買うようになった。
未練がなくなっても、彼との記憶が曖昧になっても、なんとなく続けた。
もはや特に意味はない。
私だけの、特別な約束。

今年で16本目。
甘酸っぱい味と共にぼんやりと思い出す、あの日見た澄んだ空と、冬の匂い。