12月24日。大学2年の冬。君と映画を観る。
クリスマス・イブということもあって、道のいたるところにカップル、もしくは恋人を待つ人の姿がある。そんな中を君と歩く私は、外から見たら「君の恋人」なのだろうかと、マスクの中でにやけた顔をすぐに戻す。

映画の前に近くのカフェで軽食を摂る。
ちょうど期間限定スイーツが提供されていて、他のメニューと迷いながらも、結局君は限定スイーツを選んだから、私はその愛しさを嚙み締めたよ。注文の品が来たときは、それはもうキラキラとした目で私に訴えかけながら喜びを体現するんだもの。
インスタグラムのストーリーに載せるフリをして、君の楽しそうな写真を2枚だけ撮らせてもらった。

君は今日もお洒落だ。そんなに映画を楽しみにしていたのか。
そう思いながら談笑していたら、君は言い難そうな仕草をして、映画の後に、急な予定が入ってしまった、と言う。
ああ、なるほどと、一瞬のうちにその寒そうな恰好に納得してしまう。
私となら、そんなクリスマスの魔法よりあたたかいのに。昔の自分なら、そんな言葉で引き留めたかもしれない。でも君にも私にも大切なものが増えすぎた。
「しっかり楽しんでこないと、許さないからな」