「推し」がいる人、いわゆる「オタク」の人たちは、心を大きく動かされる「推し」と出会うと「『推し』に出会って人生変わった!」と言うことがある。時にはやや軽率気味に。
そして、私もそのうちの1人だ。
もちろん「推し」本人と出会えたこともそうだが、「推し」を通じて大切な友人と出会えたから。

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私がみんなと出会ったのはTwitter上。サバイバルオーディション番組の界隈で、同じ「推し」が好きな人同士で繋がった。
「推し」の歌声に心を打たれたことは大体共通しているが、その他に好きになった理由は人それぞれ。年齢も、住んでいる場所も、それまで辿ってきたオタク遍歴もバラバラだ。
でも、何故かは今も本当に分からないが、みんな恐ろしいほどにノリが良かった。具体的なエピソードはこの場では挙げられないものの、今思えば「狂っている」とも言えるレベルである。
そんな人たちと夜遅くまで(人によっては朝まで)Twitter上で「推し」の名前を呼んだり(一方的に)に語りかけることによって、自然と「推し」とみんなが日常生活の一部になっていった。

やがて番組が盛り上がるにつれ、私たちはいわゆる「裏垢」でも繋がるようになった。
両手で収まるくらいの人数が、「推し」のための公開アカウントからは想像もつかない名前とプロフィール画像で、公開アカウントでは呟きづらいことを好き勝手に言う。
こう書くと、印象があんまり良くないかもしれない。ただ、私たちは恐らく、一般的な「裏垢」とはちょっとだけ違っていた。
表(公開アカウント)で変わらず推しへの愛を叫ぶ一方、裏では如何に「推し」を新グループのメンバーとしてデビューさせるかを考え、人知れず「暗躍」していたのである。
狂ったように「推し」への愛を叫び続けていた時代を経て、その中の何人かは「推し」ファン界隈を動かす中心人物となっていた(もっとも、裏垢らしいネガティブな内容も話していたことも否定は出来ないが……)。

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そして番組終了後、「推し」のデビューに向けて暗躍していた裏垢界隈は、みんなの日常や他界隈の推しについて、ゆるゆると取り留めもなく呟く場になった。
そしてこの場は、番組終了から1年半以上が経った現在でも続いている。

出演者の言動や真偽不明の噂などを巡って殺伐とすることもあった番組放送時、裏垢は気のおけない仲間同士で集まる秘密基地のようなものだった。
番組について呟く時も日常生活で考えたり感じたりしたことも、何気なく呟けば誰かが「いいね」をつけてくれる。暇な時や自分の推したちが尊い時はタイムラインが一気に自分の投稿で埋まるし、逆にリアルの日常が忙しくなると、数日まともに呟かないこともザラである。
でも、「ここ」に戻ってきたら、絶対に誰かが居る。
絶対に誰かが居て反応してくれるからこそ、安心して戻って来れる。
くっつき過ぎず離れ過ぎず、お互いに適度な距離感で居られる感覚。今となっては、もはやSNS上の実家のようだ。

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「大人になってこんなに仲の良い友達が出来るなんて、思ってもいなかった」
とあるYoutuberが、仲良しのYoutuberとコラボ動画を出した際にこんな感じのことを言っていた。動画を見たのはもう4~5年も前だけど、この一言が私の心の中でずっと引っかかっていた。
そして社会人になった今、リアルで多少なりともそれを実感している。私は就職に伴い地方から上京したため、元からの知り合いは周りにほとんどいない。普段は仕事に追われているため、新しいご縁も比較的薄めな自覚がある。
でも、そんな状況に置かれていても、裏垢にいるみんなは私の「友達」だと胸を張って言える。
一緒にお泊まり会をしたりライブに行ったり、遠くに住んでいる子が関東に来たタイミングで一緒にご飯を食べたり。もはや、リアルで出会った友人と遊ぶ時と何ら変わらない。
唯一違うところは、お互いに本名を把握しているはずなのに、Twitterのアカウント名で呼び合うことだろうか。

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SNSの世界は、良くも悪くも残酷だ。
今まで仲良くしていた人が急にログインしなくなったり、果てにはアカウントが知らぬ間に消えていたりもする。
アカウントこそ消えなくても、特定の人と関係を断ちたければ、ほんの数タップで「ブロック」も出来る。
そんな世界で1年半も良好な関係で繋がっていられるのは、本当に良い人たちに恵まれたし、とても幸運なことだなとつくづく思う。

時が経つにつれ、みんなの人生も少しずつ変化している。たとえ140文字以内の断片的な情報源であっても、現在進行形でそれを実感している。
この裏垢界隈が存在する限り、私はみんなの人生をおはようからおやすみまで見守ってみたいし、みんなさえ良ければ、今後も仲良くして欲しいな、と勝手に思っていたりもする。
みんな、ふつつか者ですがこれからもよろしくお願いします。

そして最後に、みんなとのご縁を繋いで下さった「推し」に、心から感謝を申し上げたい。
本当に、本当に、ありがとうございます。