私は今、台湾に留学中だ。
実家を出て、古い寮の4人部屋に住んでいる。トイレやシャワーなどはもちろん共用で、大学生だからか台湾だからかわからないが、深夜でも誰かが廊下を歩いている気配がする。

だから、部屋に設置されているデスク付きロフトベッド、二段ベッドの上の部分がベッドで下の部分がデスクになっているベッドとクローゼットだけが私の現在の城なのである。
田舎の閑静な住宅街にある実家の一人部屋とは全く異なる環境に、最初は大変戸惑ったが、2か月も経つとだいぶ慣れてしまった。

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けれども、たまにふと考えることがある。
夜の8時半に授業を終え、寮までの暗い道を歩いていると、「よく自分がこんなに遠いところまで一人で来ることができたな」と思うのである。

留学に来るまでの私は、どちらかというと外に出てアクティブに動き回るタイプではなく、実家の一人部屋で本に囲まれて静かに過ごすことのほうが好きなタイプだったからだ。
しかも、自分で言うのもなんだが、家族仲も良好で、愛してやまない愛猫もいる。
だから、家が大好きな私が一人で家を出て、遠い台湾で暮らしているのがなんだか不思議に思えてくるのだ。

自分で自分の食事を用意するようになって、食事の用意はこんなに大変なのかと思い知った。食事の用意と言っても、台湾は食事を外食で済ませる文化があるので、私も食事を学校の敷地内にある学食やコンビニで購入している。
自分の好きなものを自由に選ぶことができる、ということを最初は楽しんでいたが、思ったよりも選択肢は狭かったことに気が付くのに時間はそうかからなかった。

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予算内に栄養バランスを考えて食事を選ぶのは難しい。
安く済ませようとしたら栄養が心配だし、栄養を重視すればちょっと予算オーバー。そこで、野菜もたくさん食べれて安く抑えられるお鍋を一時期ずっと食べていた。
具材を自分で選べるので、いろいろ組み合わせを変えたりして楽しんだ。
その時は本当に一日一食お鍋を食べていたため、店員さんに顔を覚えられたほどだ。

しかし、いくら具材を変えたりしても味付けはいつも一緒なので、私はお鍋に飽きてしまった。そうなるとまた美味しい食事を探さないといけない。
一方で、家にいれば栄養バランスが考えられた美味しい食事を作ってもらえる。毎日同じメニューが続くこともない。
しかも、一人ではなく誰かと食卓を囲むことができる。それがどんなに幸せなことかを今私は実感している。

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また、私は現在レベルの高い授業に挑戦していて、周りとの差をひしひしと感じている。
慣れない環境、英語での授業。
しかも、教授は時折、現地の台湾人の人たちのために台湾語(中国語)で解説を付け加える。
何とか追いつけるように努力しているが、時折自分はなんてダメな奴なんだ、と落ち込んでしまう。
私は周りの学友たちにいつも質問してばっかりだったからだ。

でも、そんな時に家族とたわいのない話をすると、慈愛のこもった言葉をかけてもらえた。
頑張ってるね、身体に気を付けてね、と。
本当に家族は私を愛してくれているのだと感じることができた。私はダメな奴ではない、努力して成長すればいいのだと思わせてくれた。

留学で台湾へ来て、私は改めて家族の大切さを感じることができた。ずっと一緒に暮らしていたのに、離れてようやく知るなんて、と思うが、そういうものなのかもしれない。
家族が励ましてくれるのだから諦めずに一生懸命勉強しよう、そして成長した私を見せるつもりだ。
そして、帰ってからはこれまで以上に家族を大切にしたい。