7年間の1人暮らしを終了し、私は実家で家族と再び暮らしはじめた。

高校を卒業してすぐに実家を出た。思えば高校生までの期間、私にとっての実家は本当に窮屈だった。
実家は特に厳しかったこともあり、門限が定められていたり、友達の家に泊まることも禁止されていた。人から自由な生活の話を聞くたびに思春期も相まって、「自分は絶対に大学へ進学するタイミングで家を出る。もう実家には帰ってこない」と強く思ったものだった。
実際、大学進学が決まって実家を出る際に、「もうここに住むことはないんだな」と寂しく、どこか晴れ晴れとした気持ちになったことを未だに覚えている。

自立していると思っていた、大学時代の1人暮らし

大学で初めて1人暮らしをしたときは本当に楽しかった。遅くまで友人の家にいても、何時に起きても、部屋が散らかっていても、だれにも怒られないし、1人暮らしはなんて最高なんだと開放的な気持ちになっていた。
実際今思うと、遊んでばかりだった大学時代の1人暮らしは本当にお遊びみたいなもので、本当にお恥ずかしい限りだが経済的にも実家に頼っていた私はその「自由」が両親の苦労や心配の上に成り立っていることを理解せず、1人で生きているつもりになっていた。

1人暮らしに味を占めた私は、その後就職しても地元から離れた場所で1人暮らしを継続した。新しい土地に新しい仕事、働いて自立する自分に当初は少し酔っていたのだと思う。
連日仕事が遅くなっても、出迎えてくれる人もおらず、寒い部屋で過ごす。休日も自分だけのために食事をとり、ほとんどの時間を1人で過ごす。
こうした現状に時折苦しくなりながらも、帰省のたびに温かく出迎えてくれる家族を恋しく思いながらも、私は「実家に戻るなんて負けだ」と思い込んでいた。

社会人3年目に訪れた、実家暮らしに対する心境の変化

社会人3年目を過ぎたころ、前職を退職することになり、一時的に実家へ戻った。転職活動をしつつ、また次の1人暮らしをするための準備をしようと思っていた。
高校を卒業してから長期的に実家で過ごすのは、ほとんど初めてだった。実家に戻ってきた当初は家族に「もてなされている感」というか、「仮住まい感」が抜けきらず、早くまた自由気ままな1人暮らしに戻りたいと思っていた。

次第に実家で過ごすうちに、徐々に居心地がよくなっていることに気が付いた。それも、高校生まで過ごしていた時よりも。今思うと、完全に「養ってもらっている」という子供感覚が抜けて(今でもかなりお世話になっていることは否めないが……)、自分も仕事をしていることで、「独立した大人同士の共同生活」に少し近くなるからなのではと思う。
それぞれの人生が家族にもあって、私にもある。でも一緒に暮らす。というのは割と居心地がよかったりする。

どの選択も正解だと思えるよう、暮らしていく

それから実家に正式に戻ることとなり、改めて仕事終わりに人が家にいることや食卓を家族で囲めることが本当に嬉しいし、もう私が地元に戻ってくることはないと半ばあきらめていた祖父母たちも本当に喜んでくれていることも嬉しい。

1人暮らしをしたら、実家に戻ることは負けだと思っていたけど、そう思っていたのは自分だけだった。私は一度家族から離れて暮らすことで、改めて実家や家族の大切さを痛感することができたから、1人暮らしをしたことも、それを経てまた実家暮らしに戻ったこともよかったと思う。

この先のライフステージはまだ分からないけれど、自分の選択を勝ち負けで選ぶのではなく、どの選択も正解だと思えるようにこれからも暮らしていきたい。