ちょうど人肌恋しくなり始めた去年の11月下旬。大学時代に仲良くさせてもらっていた友人2人と同窓会的なzoomをしていた。
男1人、女は私を入れて2人の3人で、そのうち私だけが結婚していなかった。普段通り当たり障りのない平穏な会話の中で、結婚生活の話が出た。そしてしばらく話した後、彼は少し気まずそうに「この冬、離婚するんだ」と私たちに報告した。
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そりゃもう寝耳に水。びっくりした。親交は無いけれど、彼の奥さんは私達の1つ下の同じ大学、同じ学部の後輩だった。
詳しくは聞けなかったけれど、離婚理由が「方向性の違い」と言って、「バンドか?」と思わず口をついて出てしまったのは許してほしい。驚きすぎて配慮という2文字が頭からスッパーンと抜け落ちていた。それくらい彼が離婚するのは驚きだった。
だって彼は誠実で優しくて外見だって整っている。責任感も強いのを知っていたから、その決断をするに至った経緯は相当すさまじかったのだろう。
それか、蓄積された重みにお互いが耐えられなくなったのか……。彼は遠慮し過ぎる部分があるからそれもあり得る。
まぁ、そんな友達の吹っ切れたようでしょげている姿に私は思わず「クリスマスパーティをしよう」と提案したのだった。
コロナのおかげで、隠居大好き人間の私は外に出ずとも人と会えるこの環境が気に入っている。皮肉な感じだけども。そんなご時世だったものだからそのパーティもzoom開催となった。
プレゼントは予定日までにお互いの家に送り合う。その中に来年の抱負なんかを書いた紙も入れて、新年を迎える準備もしようという抱き合わせ企画になった。
来年の抱負を考えながら、せっかくだからお互いが「うん!」と納得できるような言葉を選ぼうと、「成長をする一年」とか「長所を伸ばす」とかそんな感じの薄っぺらいけど共通の感情を抱ける言葉を100均で買った小さなカードに書き、それぞれにプレゼントと共に送った。
おそらくみんなそうするだろうと思っていたけれど、これは面白い形で裏切られることになる。
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当日までに届くプレゼント、いつもは鳴ってほしくないチャイムが鳴るごとに少しワクワクした気持ちになる。
彼からは小さな小包が届き、彼女からは人でも入ってんのかってくらい大きな段ボールが届いた。部屋で並べてみれば、昔絵本で読んだ舌切り雀の大きなつづらと小さなつづらみたいで、ますます大きい方に人かもののけの類が入っている確率が高くなった気がした。
クリスマス会当日、私達は各々好きなお酒と好きな料理を傍に置き、それぞれ紹介してから乾杯した。クリスマスと言えどいつものzoomと変わりないのだけれど、何故か特別な感じがした。
そしてプレゼント交換という名目の開封式。これで大きなつづらの中身が分かる。送った本人も驚いていて、「そんな大きい段ボール知らん」と無責任な事を言い出した。
本当に人が入ってたらどうしようと思ったけど、中には足先を温める機能がついた丸いクッションが入っていた。ピンク色でとても可愛い。大きな段ボールの大半は緩衝材だった。
彼からは私も彼女も同じものが届いていて、ロクシタンの小さなハンドクリームセットと小さなトナカイのぬいぐるみがやってきた。彼女と私で同じものを選ぶあたり、やっぱり彼は「うまいなぁ」と思った。
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そして最後の来年に向けての一言カードだが……。
彼女からは豪勢なクリスマスカードが。彼からは「忘れてました」の一言が。なんだって、貴様。貴様に来年はねぇのか!と2人で怒ったふりをしておどけた。
気を取り直してまず2人が私のカードをそれぞれ読み上げて、「いいねぇ」と言った。ふふん、そうでしょう。しっかり考えたもん。
その後、私と彼が彼女のカードを開くと、そこには一言「プチプラを買わない」。え、これ来年の抱負?彼の方には「ジムに通う」と書いてあった。
豪勢なクリスマスカードに大きな字で一言、己の予定というか叶いそうもない誓いを書いた彼女。いたたまれない雰囲気で恥ずかしそうな彼女。
「めっちゃ個人的過ぎるの書いちゃった」
その前にコレ抱負?というツッコミの前にめちゃくちゃ笑った。豪勢なカード買って君何書いてんの。面白過ぎる。
我ながらとてもいい企画をしたと思った。今年はお互い忙しく開催できないけれど、来年はもう一度このクリスマス会を予定しても良いかもしれない。