2018.12/25
「新着のメッセージが2件あります」

クリスマスはリア充達が一斉に動き出す日。
私もその一人。彼とのデートプランを決め、迎えた当日の朝。携帯が鳴った。
どんな時でも寝坊は当たり前な彼がこんな早くに起きて連絡をしてきたなんて、楽しみで早起きしちゃったのかなと想像しニヤけた。
舞い上がる気持ちを抑えつつ携帯を開くと、
「今日行けなくなった」
「ごめん」

◎          ◎

落胆した。それと同時に変な胸騒ぎがした。
なんで?理由は?クリスマスデートは?光のページェントは?プレゼント交換は?頭の中のクエスチョンがとまらなかった。
私の既読がついたのを確認したかのようにもう1件。
「母ちゃんが倒れた、病院にいるから連絡返せない」
それきり、返信が来ることはなかった。

楽しみだったけれど、それは仕方ないよね。落ち着いたら、遅めのクリスマスパーティーをすればいいかなんて考えた。
その日は何も手につかなかった。
デートのために新調した、彼好みの洋服。新しいコスメ。お気に入りの香水。前日から机の上に準備していたものを横目にただぼーっと過ごした。
携帯を開くと、クリスマスデートを楽しむ友人達のタイムラインで溢れていた。

気づいたら眠っていた。
カーテンを開けると外の世界はホワイトクリスマスだった。
雪は嫌いだけれど、デートの時に降る雪は特別な気がして嬉しい。
本当ならば、今頃は電車に乗って目的地についていたのだろうなと考えながら携帯を開いた。

◎          ◎

「彼の手……彼の服……彼の家……」
フォロワーの女の子のSNSにタイムラインで流れていた。
一目で確信した。浮気だ。
血の気が引くという言葉を耳にするが、どういう感覚なのか全く想像が出来なかったけれど、この時に初めて分かった。
彼に電話をしても表示されるのは「応答なし」の文字。
彼女でもある私とのデートを断って、お母さんを理由に浮気なんて怒りから地獄に落ちてしまえばいいと正直思った。

数日後、私が知っているとも知らずに彼から連絡がきた。
「母ちゃんが退院したから今から会おう」と。
いつもの待ち合わせ場所で彼のために用意していたプレゼントを渡し、私は何も言わずその場を去った。
彼を責めたりはしなかった。話を聞くことも恐れた。
ただ涙は止まらなかった。

その日からクリスマスが嫌いになった。
クリスマスが近づくにつれてあの時の記憶と感情が蘇り、付き合っている人とお別れをしてしまう傾向がある(謎)。
恋人がいたクリスマスはあの時で最後だ。
冬の一大イベントを楽しめないまま、3年が経った。

◎          ◎

2021年のクリスマス、私の隣には好きな人がいた。
彼が食べたいと言っていたローストビーフに唐揚げ。生ハムチーズにマカロニサラダ。
クリスマスならではのものをたくさん作ってクリスマスパーティーをした。
頑張った甲斐があり、彼も喜んでくれた。
彼の笑顔を見ていたら、クリスマスはいいなと思えた。

子供の頃の朝起きたらプレゼントが枕元にある喜びのような感情を忘れていたけれど、彼と過ごした夜はその気持ちを思いだせた気がした。
そんな彼と今年で2回目のクリスマスを過ごす。
彼のリクエストのローストビーフと唐揚げは忘れずに、好物のもので腕を振るう予定だ。