初めて飲んだ真っ赤なワイン。
ワインの入った軸の細いグラスは冷たい。
それなのに、ワインは喉を通ると冷たさから熱さに変わった。
喉が焼けるようだった。そしてすっと熱さは消えていった。
あれが私の最初で最後の赤ワイン。
私の恋のように燃えて消え去った。
私の初恋の思い出の一幕だった。

◎          ◎

まだ私が大学生だったとき、自由に生きる彼氏がいた。
ひと回りも年上の彼だった。
働いているものの、パチンコにお金を注ぎ込んで、生活はカツカツ。
大学生だった私に、お金がないから貸せと泣きついてくるようなだらしない彼だった。でも、彼のことが好きだったから、愛していたから、大学時代にしては高額の10万円を貸したっけ。ふふっと今でも笑ってしまうような出来事だ。
ちゃんと返ってきたから笑えるのかもしれないが、もし返ってこなかったとしても、きっと許せてしまったんだろうなとどこかで思う。それだけ彼のことが好きだったから。

彼と私は禁断の恋のような関係性だった。
ひと回りも年上で、彼は高卒で、だらしない生活をしていることも知られていたため、付き合うことも家族から反対されていた。だからお風呂場や布団に潜り込んでヒソヒソ電話したり、ひっそりメッセージのやりとりをしたりと、関わるだけで一苦労することも多かった。

そして私はどうしても彼に会いたくて、夜中の0時に裸足で家を飛び出していたのだ。
今考えても笑える。穏やかで静かに過ごすことを望んでいた私が、何とも危険なことを犯していたからだ。
でも、その時は危険だからなんてどうだってよかった。ただただ彼に会うことだけ、それだけを考えていた。それが達成できればよかった。そして彼も同じ気持ちだったんだと思う。

◎          ◎

そんな危うい関係の中、迎えた初めてのクリスマスデート。
今でも忘れない。家族に猛反対されてなくなってしまったのだ。
彼が一泊二日の旅行プランを考えてくれていて、私もそれに行く気満々だったが、叶わなかった。私と彼の関係をよく思っていない家族に友だちと泊まりに行くとごまかして伝えたことがバレたのだ。こっぴどく叱られ、家から出ることもできなくなってしまった。
ごめんね、ごめんねと彼に何度も謝った。あの時彼は、きっと、私のためにホテルも遊ぶ場所も計画してくれていたのに、最終的にキャンセル料も払わせてしまって終わった。
わかは悪くないからって寂しそうに彼が言っていた。ものすごく私が悪かったのにね。だから次の年のクリスマスデートは日帰りで少しだけ会うことにしていた。それだけでも家族の了承を得るのに苦戦した。

わかと過ごせるクリスマスは特別だからと用意されていたのは真っ赤なワインだった。俺はわかを家に送り届けたいから飲めないけど、わかに飲んでもらいたくてと綺麗なグラスに注がれていた。
喉が焼けるようなワインで味はあまり覚えていない。でも、彼が私のことを嬉しそうに見つめていたことはよく覚えている。

◎          ◎

でも、燃え尽きた。

社会人になって、金遣いが荒く、だらしない彼と付き合うことに抵抗を感じるようになっていった。価値観の違いも気になり、危険を犯すことへの違和感を覚え、私から別れを切り出した。遠距離だったこともあり、彼もしょうがなさそうに別れを受け入れた。

寂しくなかったといえば嘘になる。でも別れたことで私も彼も新たな一歩を踏み出せた。
彼は会社を立ち上げ、私は苦手だった文章を書くことで新しい自分と向き合うことができるようになった。
昔では考えられない変化を遂げた。

美しいな幕引きだ。
でも現実は美しい幕引きではない。
どこかで思う。今でも私のことを好きでいてくれる元彼。そんな元彼と完全に縁を切ることができない。時々元彼の「ほんっとにわかはかわいいなぁ」が聞きたくなってしまう。
いつか、あの時のクリスマスの思い出が、美しい思い出となるように、私は過去ではなく、輝く未来を見つめられるようになりたい。