社会人になるタイミングで実家を出た私は、人と暮らしたり何度か引っ越しをしたりして、今の一人暮らしに落ち着いた。

思えば実家にいた頃は、机の上すらろくに片付けられず、特に必要のないものばかり買っていて、自分の部屋はいつも散らかっていた。そんな私が一人で暮らせるのかと思っていたが、まあ人並みにやっていけるだろうという根拠のない自信があった。
後にそれは、勘違いであることがわかる(「東京を離れて就職、遠距離恋愛。車窓のスカイツリーを見て泣いていた」)。

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新卒で地方に就職した私は、家賃が安いのを良いことに、生意気に1K12畳、お風呂とトイレが別の広い角部屋に引っ越した。
しかし、時間が不規則でイレギュラーの多い仕事や、知り合いのいない土地に慣れることはなく、一年が経つことになる。本来なら家くらいでは落ち着いて過ごしたいのに、私はそうはなれなかった。

広い部屋の真ん中には、ちんまり家具置いてあるだけだったし、半ば間に合わせで買ったラグやカーテンはそれぞれ色が合ってなくてちぐはぐだった。その時々で自分なりに選んだもののはずだったのに、私の部屋にそれらが置かれると、なぜか馴染まなくて、愛着が湧かなかった。部屋を決めるときには気にもとめなかったが、壁紙も光ってるみたいに真っ白で落ち着かなかったし、窓は大き過ぎて冬はとても寒かった。

さほど家具も家電もないので部屋は広さを持て余し、生活感もなく、特別好きなものに囲まれているわけでもない。気候のおかげかいつも部屋は湿っぽかったし、外に布団や服を干しても、取り込むタイミングが遅れてしまうと夜露で余計に濡れてしまった。朝方になると一定のリズムで鳴く鳥がいて、一度起きてしまうとなかなか眠れなかった。

土地にも馴染めず、自分の家も好きになれない。でも、もっと私を落ち込ませたのは、この環境を選んで作り出したのが自分だということだった。
私は休みのたびに地元に帰っていた。その後段々と自分の部屋では安らげなくなり、眠れなくなっていった。私の部屋は眠れない空間という印象が強く残ることになった。

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その後、なんとかこの一人暮らしから抜け出し、地元に戻って人と住むことになるのだが、同居人と別れたことで2年経たないうちにまた一人暮らしをすることになる。

人と住むことで少しの自信を取り戻していた私は、慣れないあの環境での一人暮らしを思い出していた。また同じことが起こるのかもしれない。
……と思ったけど、実際はそんなことなかった。

最初は一人になったことの寂しさが確かにあったが、今度はしっかり、この環境を選んだのは自分自身だという感覚があった。会える距離に家族や友達がいることはとても大きかった。
今私は自分の部屋をとても気に入っている。小さいけどコンパクトで、目に映るものは全て好きなもの。部屋に遊びにきてくれる人たちもいる。
少し時間がかかったけど、人と暮らす良さも、一人で暮らす良さもわかったつもりだ。これからは、自分の暮らしは自分で守っていける。