「やっと今週会えるね!」
これが最後の会話。
彼との出会いは某マッチングアプリ。
「マッチングアプリなんて、所詮出会い系。体目的だろうな」そんな印象だった。
私の考えを覆したのが彼だった。

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大体、好きになる人の優先順位として中身重視な私。
周りからは外見を初めに見たほうがいいと、耳が腐れるほど言われてきた。
本当なら外見から入りたいけれど、私の偏見でカッコイイ人ほど浮気をするという固定概念が邪魔をして、外見はイマイチでもとにかく一途に思ってくれる人を選んでしまう。

結局は外見、内面に関わらず浮気する人はするのだけれど。
マッチングアプリは限られたプロフィール情報と写真の外見だけで判断し、運が良ければマッチできる仕組みの為、ワクワクした。

ある日、いつものように体目的に会いたいとせがんでくる人を回避しながら、右や左にスワイプしていた時に出てきた「K」という男性。
プロフィールの情報で得られたことは「K」、「住んでいる地域」、「年齢」この3つだけだったが、外見がドがつくほどドタイプだった。

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左にスライド続きだった人差し指も迷いなく右にスライドしていた。
数時間後、二度通知が鳴った。
ドキドキ高鳴る気持ちを抑えつつスマートフォンを覗くと、
「新しいマッチが見つかりました!」
「Kがあなたに新しいメッセージを送りました」
早く見たいけれど、即レスで気持ち悪いと思われてしまうのではないかと考え、画面を消した。
まずは様子を見つつ、1時間空けよう。徐々に相手に合わせていくことにした。

話の波長が合い、お互いに仕事をしていたこともあり、限られた時間の中での会話だったけど楽しかった。
マッチングアプリをしている理由、職業、家族構成、趣味や好きな物、親しくなるにつれて詳しく教えてくれた。
もちろん、私も話した。

音声通話、ビデオ通話もした。
夏の季節が終わるころ、彼から「ジジに直接会ってみたい!」と言われた。
次第に彼へ心を許している自分もいた為、私も会いたい気持ちがあり承諾した。
仕事の都合も合わせ、翌月の月末に予定を組んだ。
それから会える日が楽しみで待ち遠しくて、1日1日がとても早く感じた。

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会える日も目前に控えた日、彼から冒頭の連絡が来た。
あの通知を見た瞬間、過去の恋愛の恐怖心がフラッシュバックしてきて衝動的に連絡先を消してしまった。
なぜそんなことをしてしまったのかわからないけれど、怖くなったのだと思う。

連絡手段が無くなって取り返しのつかないことをしてしまったと気づいた時には、日常の中の1つでもあった彼の存在が無くなり、どこか寂しかった。
あの時会えていたら、今頃何をしていたかな。
彼との関係は続いていたかな。
マッチングアプリを始めてから、スマートフォン1つで繋がれる楽しさを知れた。
もちろん、名前も顔も知らない人の怖さもあったけれど、知らない世界に飛び込んでいるようだった。

彼に何も言わず消えてしまったけれど、彼と知り合い連絡を取り合っていたあの期間は、何にも代えることのできないかけがえのない日々だった。
今は顔も声も思い出せないけれど、かずきくんに出会えて良かったな。