「私は宇宙人と二人暮らしをしている」。私が宇宙人と呼んでいるのは一緒に暮らしている交際相手のことで、交際相手もまた私のことを宇宙人と呼んでいる。
我が家は違う惑星で育った宇宙人二人が、同じ屋根の下で平和を保ちながら暮らしている。

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誰しも同棲や同居を始めるときにルールを決めることだろう。私たちカップルも同棲を始めるときにルールを決めた。
たくさんのルールに縛られて生活するのが息苦しいタイプの私たちは、シンプルに1つだけ。それは「お互い宇宙人だと思って生活しよう」。ここから宇宙人との同棲生活がスタートした。

私たちは違う文化、違う価値観で育ってきた。遠距離恋愛をしていた私たちは暮らしてきた地域も違う。だからこそ、すれ違うことはたくさんあるだろう。理解できないことも納得できないこともきっと出てくる。
そんな時、お互いを宇宙人と思っていたらどうだろ。
「まあ違う惑星の人だからしかたない」「相手の惑星の文化を尊重しよう」
こんな風に思える。

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時は流れてはじめて二人で過ごすお正月がやってきた。私の惑星で母から伝授されたお雑煮を作った。すると宇宙人はこう言った。「おもちの入ったおすましって珍しいね」と。
相手の惑星ではどうやらお雑煮はおすましではないらしい。宇宙人からそちらの惑星のお雑煮の情報を聞き出すと、どうやらお雑煮は味噌汁におもちを入れるらしい。
実際に食べてみたが、私の惑星の味とはかけ離れていて、私はお雑煮と認識できなかった。「やはり私たちは違う惑星で育ったようだ」。そんなことを言いながらお正月を過ごした。

ある日、一緒に水族館デートに行くことになった。水族館好きの宇宙人が、出発から帰宅までのプランを練ってくれた。
宇宙人が「駅から近いからそんなに歩かないよ」と言っていたので、私は気合を入れておしゃれをした。髪の毛を巻いて、レースのワンピースをまとい、ヒールをはいた。かわいい小さなバッグに荷物を収めるため、折り畳みの日傘はポイっと放った。

当日、最寄りの駅に着き、水族館を目指して歩き始めた。歩き始めたのだが一向に到着しない。
夏の日差しとアスファルトに反射する熱が、私の体をジリジリと攻撃する。コツコツと歩くヒールは家に帰るまで足が持つのかと不安になる。
そんな不安を抱えながら歩いていると、ようやく水族館が見えてきた。時計を見ると歩き始めてから約30分が経過していた。
私の惑星のそんなに歩かないという感覚は10分ほど。長くても15分くらいだ。隣にいる宇宙人と2倍もの感覚の差があったのだ。この日、惑星が違えば距離や時間の感覚も違うと気づかされた。

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逆に宇宙人に私の行動を驚かれた経験もある。
私の惑星では電波を飛ばして遠くにいる相手とこまめに通信を行う。要するに、こまめに家族と連絡を取り合っているのだ。
ある日は母と通話をし、ある日は妹と写真を送りあい、ある日は弟とオンラインゲームと、頻繁に連絡を取っている。その光景に驚いていた。

どうやら私の惑星は、ほかの惑星よりも家族との距離が近いらしい。自分の惑星から出てみて初めて気がついた。家族との距離感は比較する機会が少ないので、他の惑星で育った人と一緒に暮らしてみて気がつけることもある。

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宇宙人との交流は面白い。今まで当たり前だと思っていたものがすごく狭い世界のものだったと知ることができる。新たな文化や価値観との出会いがある。
私たちはこれからも宇宙規模の視野を持って、平和な家庭を築いていこうと思う。