子どもの頃から、長所は計画性があることだった。
学校の長期休み前、置きっぱなしの荷物を持って帰る際は、今日はこれ、明日はこれ、と予め持ち帰りの計画を立てた。最終日はほとんど何も持たなくていいようにしようと決めていた。
さらに、夏休みの宿題は必ず休みの前半に終わらせた。終わらせないと気持ちよく遊べなかったのだと思う。誰に教えられたわけでもなく、気づいたときからそういう性格だった。

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そのような私の長所は、大学生になっても社会人になっても変わらなかった。
テスト勉強を一夜漬けでどうにかするということはしたことがなく、コツコツ勉強した。就職先を決める際には、結婚しても子どもを産んでも長く働ける会社に入りたいと強く思っていた。私は今後の人生さえも計画立てていたのだ。

新卒で入社した会社で産休育休を取得しながら長く働くこと、地元の人と20代のうちに結婚すること、20代後半〜30代前半で子どもを2人産むこと、これらを叶えれば幸せだと信じて止まなかった。
仕事と家庭を両立させる女性はかっこいいと思っていたし、お互いの両親の近くに住みながら共働きをすれば、マンパワーの面から見ても、経済的にも子ども2人を育てていくことは可能だと思ったからだ。自身の中で理にかなった計画だった。

しかし、恋愛と結婚とは難しいもので、計画通りにはいかなかった。ここまで上手くいかなかったのは人生で初めてかもしれない。
まず、社会人になってから結婚を考えて付き合っていた地元の人とは、あっさり破局した。辛かったが、振られてしまったのだからしょうがない。
気持ちを切り替えて、そのうち地元の婚活パーティーにでも参加しようと思っていた。しかし、その数ヶ月後、県外にライブに行った際に知り合った人と仲良くなり、付き合ってほしいと告白された。

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この時は正直悩んだ。彼は優しくて気遣いのできるユーモアあふれた人だった。人としてはとても好きで、また会いたいと思った。
しかし、住んでいるのは私の地元である静岡から遠く離れた兵庫であった。20代で結婚するなら、もうあそびで何となく付き合うという時間はない。もしお付き合いが続いて、いずれ結婚するとしたら、仕事を辞めるべきは年収の低い私のほうだろう。そうすれば新卒で入社した会社で長く働くという計画は崩れ去る。それでもいいと思えるほど魅力的な人だろうか……?
あらゆる考えが頭の中をグルグルと回ったが、結果としてお付き合いすることにした。結局、計画性よりも好きという気持ちが勝ってしまった。それだけである。

時が経ち、私は彼と結婚した。付き合う前に考えていた通り、私は仕事を辞めざるを得なくなった。夫の転勤に合わせて関東に住むことになったからだ。
転職先もきちんと吟味して、産休育休を取らせてもらえそうかつ家庭との両立もできそうな職場を選んだ。今度こそ、数年後に夫が転勤になる時までここで働いて、その間に子どもを産めたらいいなと考えていた。

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しかし、転職してたった2年弱で夫は再び転勤になった。今度は海を飛び越えて北海道だ。5年くらいは異動しないものだと思っていたので、この転勤は想像以上に早いタイミングだった。もちろん私はまた会社を辞めることになった。
またしても私の計画通りに事は運ばず、しかも子どもが欲しいのに、なかなか妊娠に至らないストレスもあって本当に悲しくなってしまった。

それでも「いつかこっちに戻ってきたらまた働いてね」と温かく送ってもらい、北海道へと飛び立った。初めての土地で、仕事は何をしようか悩んでいた矢先、妊娠していることが分かった。ずっと望んでいたからこそとても嬉しかったが、さすがに妊婦を雇ってくれる会社はない。こうして私は専業主婦になった。

全くの想定外である。大学を卒業したばかりの私には到底想像もつかなかっただろう。
結婚相手は地元の静岡ではなく兵庫出身の人で、今住んでいるのは何と北海道。会社は2回辞めていて、専業主婦になっている。

でも、計画通りにいかない今が不幸せだろうかと考えると、全くそんなことはない。後に無事に出産でき、赤ちゃんは可愛い。夫も付き合った頃と変わらず優しいし、たくさん笑わせてくれる。しばらくは育児に専念しようと思うが、今後転職をしなくていいように在宅でできる仕事を妊娠中に始めた。

計画通りにいかなくても、なるようになるし、幸せにもなれると気づくことができた。今後も、2人目の子どもが欲しい気持ちや仕事の幅を増やしたい気持ちもあるが、あまりキッチリと計画立てず、適度に力を抜いて臨んでいきたい。