一人になりたいから一緒に暮らす。
矛盾にも思える言葉である。
でも私は一人の空間を得るために一緒に暮らすことを選んだ。

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今住んでいる家には私の部屋が存在しない。学生の頃も社会人になっても勉強や仕事をするのは台所。誰かに見られた空間で集中できないこともあるが、それが日常だった。
彼氏とこっそり電話をしたくても、部屋がなくてはどうしようもなかった。お風呂場や寝室でコソコソ電話することが日課になっていることもあった。

部屋が欲しい。自分の自由に過ごせる空間が欲しい。そう願って20年は経ったのではないだろうか。気づけば私も30歳目前。誰にも非難されずに自分のプライベート空間を得るために考えた。
その結果が「一人で暮らせる空間を得るために、一緒に暮らすこと」だった。

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賃貸を借りて一人暮らしをしたり、彼と部屋を分けて二人暮らしをしたりするのも良いと思った。でも、今住んでいるところは立地条件がかなり良い。駅が近く、スーパーや薬局も近い。コンビニだって徒歩圏内にいくつかある。生活するにはとても便利な場所だった。
賃貸で考えると、今の立地条件を維持したままの場所を選べば、かなり高額な資金がかかってしまう。そうなると一人の空間を確保しても、毎月の家賃が気になってしまう。
しかし、今住んでいる家には私の部屋がない。これはもう変えられない状態だった。

立地はいいが、一人の空間がない、今住んでいる家。一人の空間は確保できるが金額が気になる賃貸。迷った末、私は一つの目標を立てた。
祖母が以前住んでいた、今は物置状態のお店を建て替えることだった。

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祖母の住んでいた店は、私が今住んでいる家の隣にある。立地条件的に言えば、今の家と変わらず好条件だ。それに、賃貸ではないため、家賃を払い続けるわけでもない。自分の家になれば、自分の好きなデザインや部屋割りが可能になってくる。そうなると自分の部屋を確保することも容易だ。
今住んでいる家の隣に住むわけだから、両親がしょっちゅうくるとは思うが、部屋があるため自分の自由が確保され、親の面倒を見ることになっても、また、自分の生活が大変になっても、お互いを支え合うことができる。これは良いことづくめだった。

でも、そのためにはまとまった資金が必要だった。家を建て替えると口では簡単に言えるが、やろうと思うと壮大だった。お店は古く、震度4の地震で倒壊する恐れがあると言われているため、基盤からの建て直しになる。祖母の土地のため、親戚の承諾も必要になる。どういう家にするのか、家族で話し合う必要もある。いろいろ頭の中では困難なことがぐるぐると渦巻くが、正直何にいくらかかるか見当もつかない。しかし、一つ言えるのは膨大な資金が必要になってくるということだ。

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だから私は、実家で家族と一緒に生活を継続することにした。お金を貯めるために、一緒に暮らすことを決意した。
一人の空間を最終的に得るために、今の一緒の生活を続ける。そして家を建てたら絶対に自分の部屋を作る。
自分の部屋ができたら何を置こう。どんな部屋にしよう。初めての自分だけの部屋ができるのはまだまだ先かもしれないが、今からワクワクしている。

でも、ワクワクは一人の空間ができるからだけではない。新しい家を建てたときに、喜んでくれる家族がそばにいると思うと、それもワクワクの一つになる。
一人で暮らすも一緒に暮らすも、それぞれの良さがある。
だから私は両方の良さを取り入れて、幸せな生活を手に入れられるようと前へ進む。
お金を貯めて、少しずつ先を見る。
一人になるために一緒に暮らし、一緒に暮らすことで一人で暮らせる空間を。