私は、自分の面倒を見るのが下手である。

大学に通っていた四年間、一人暮らしをしていた。それまで実家でぬくぬくと育った子どもが、急に何もかもを一人でしなければならない。家事はそれなりにできた。が、まともにしなかった。それは面倒くさいという一点に尽きる。

◎          ◎

別に、掃除しなくても誰かに迷惑かける訳じゃないし。こうして床の踏み場のないくらい、講義の教科書や資料がちらばる。明日の時間割を見て、必要なものを発掘する作業は私を困らせるのに。

別に、空腹が満たされればそれでいいじゃん。米を炊き、スーパーでグラムあたりが一番安いふりかけで食べる。せめてもの理性はもやしと見切り品の肉や野菜でなだめる。肌の不調や常にあった便秘の原因は、かなりの割合をこれが占めていただろう。

別に、今日は引きこもりで、明日は誰にも会わないし外にも出ないしお風呂はいいや。特に冬に起こりがちな現象。寒いからと一日中布団にくるまり永遠ネットサーフィン。耐えきれない空腹になると、保温しっぱなしのごはんを三分でかっこむ。トイレは仕方なく行く。シンプルに、汚い。

大学を卒業し、就職を機に付き合っていた人との半同棲が始まった。自分の6畳アパートはあったが、彼の方が広い部屋を契約していたので転がり込む形で。
人に見られているという意識があるだけで、適度に掃除をし、毎食栄養バランスを考えた食事を共に取り、毎日お風呂に入るようになった。人間をちゃんとしている。
お風呂入るの面倒くさい、と彼がこぼせば、入りなさいと言うくらいに。全くもって、どの口が言うのか。
そして結婚し、二人暮らしになり、今や三人暮らしに変化した。

◎          ◎

こまめに掃除をする。モップをかけて、水回りを洗って、棚などのほこりを取る。だって、子どもには清潔な環境で暮らしてほしいから。のびのびと床を転がって遊べるように。

三食、旬の野菜をたっぷり使って自炊をする。お出汁を取り、塩麹や塩レモン、甘酒を自作する。干し柿も仕込んだ。これはおやつにするのだ。健やかに成長してもらうために、豊かな味覚を養うために。

当然、毎日お湯を張ってお風呂に入る。子どもは夫が入れてくれるのだけど、いつも何やら楽しそうな声が聞こえてくる。何で遊んでいるのか、水鉄砲、じょうろ、しゃぼん玉。たまに石鹸が目に入ったのか泣き声も聞こえるけど、これはまあ、しょうがない。きれいのためだもの。

◎          ◎

自分のお世話は下手だったけど。子どもに対しては、もっといい衣食住、生活を提供できるのではないかと常に模索している。そしてそのついでに、私はまともな生活を送ることができる。掃除された部屋に住み、健康的な食事を取り、毎日お風呂に入る。

誰かと一緒に暮らさないと、ここまで頑張れない。結果的に、以前より清潔だし、肌や胃腸のトラブルが減ったし、もう一人暮らしには戻りたくないなと思う。セルフネグレクトでごみに埋もれて衰弱死とか、素質がありすぎて。
私を人間たらしめている家族に、日々感謝している。