年始から胃の不調で倒れ、緊急搬送された。診断は原因不明。血液検査や、胃カメラを行ったが、とくにこれと言った悪いところは見当たらなかった。
それから数週間ほど胃の痛みに苦しんだ。四六時中胃がキリキリと痛む。今では思い出したくもない痛みだ。次第に調子を取り戻し、この時の不調は私の中から忘れ去られることとなる。
しかし、九月。突然の動悸と胃の不調がまたも私を襲ったのだ。症状は深刻で、食事もまともにできない状態だった。
病名は「自律神経失調症」。精神疾患であることはわかっているが、詳しい原因は不明である。

原因不明という言葉が、さらに私の心を追い詰めた。治しようがないからだ。
ある人はストレスが原因だろうと安定剤の服用を勧め、ある人はうまく自分をコントロールしながら一生付き合っていくしかないと言った。
この病には答えがない。仕事もできずバスにも乗れず、いきなり襲う不安感と動悸に耐える日々。どうやったら治るのだろう、いつまで続くのだろうと考え込みすぎて眠れない毎日を送っていた。

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そんな私を救ってくれた救世主は夫だった。
もともと、極度の心配性で人に気を遣いすぎる、ネガティブ気質な私に夫はこう諭した。
「人生の中でずっと良い状態の人なんていない。今は体を休めて、見つめなおすタイミングなんじゃないかな」
休みの日に昼まで寝てしまったことにさえ後悔してしまう私。完璧にできない自分にいつも腹を立てていた。私はなんでこんなこともできないのかと。
そんな私に夫は自分を許すことを教えてくれた。自分を認め、許し、そして愛する。一番近い存在の自分を愛することができないなら、人を愛することなどできないと。
「僕を大事だと思ってくれてるのなら、まずは自分を大事にしてほしい。なんたって君は僕の一番大事な人だからね。僕の大切な人に優しくしてね」
夫の言葉を何度も思い返し、涙を流した。私は独りではなかったと気付かされた。その日は安心感からか、久しぶりに自然と眠りにつくことができた。

次の日、目が覚めたのは昼の十一時を回った頃だった。以前は午前中を無駄にした後悔でいっぱいになっていた私だが、この日は違った。体が眠りを欲していた。午前中まで眠れたのだから有効活用ではないかと思い、笑って自分を認め、許したのだ。
とても気持ちが良かった。自分を認め、許すことがこんなにも心を軽くするものだとは思わなかった。夫は私の頭に掌を乗せて「偉いね」と言って褒めてくれた。

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今となっては、体調が悪かったとは思えないほど元気に生活している。仕事にも復帰し、子どもが眠った後、大好きな映画を夫と一緒に鑑賞するのを楽しんでいる。
私は夫の言葉で、人としての大きな一歩を踏み出した。自分を認め、許し、愛する。自分の一番の理解者は自分だということ。世間体に流されず、強く生きる自分に少し近づけた気がした。
来年もまた新しい気づきのある一年になりますように。