私が生まれた土地はご当地ラーメンがすごく有名で、今でも出身地を口にすると「あ、ラーメン有名だよね」という相手からの返しと、「そうなんです!食べたことありますか?」までが会話のワンセットになっている。

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幼い頃から外出先でのランチはほとんどラーメンだった我が家。どんなにお寿司やハンバーグが食べたいと言っても却下され、ラーメン屋の暖簾が見えるたびに、「今日もまたラーメンか……」と肩を落としていた。

今だから笑い話にできるが、当時の私はこの世に醤油味のラーメンしか存在しないと思っていた。なぜなら、私のふるさとのご当地ラーメンが醤油味の太ちぢれ麺で、そのお店ばかりだったからだ。

ラーメン屋に行けば親が勝手にメニューを決めてしまうので、毎回醤油味のラーメンばかり。あまりカップラーメンやインスタントラーメンをストックしておく家ではなかったので、小学生になり自分のお小遣いで某有名企業の塩ラーメンを買って食べた時の感動と衝撃は、今でもはっきりと覚えている。

しかし不思議なもので、大人になった今、地元のご当地ラーメンが大好物。幼い頃はあんなに他の味を求めていたのに、今ではあの土地で食べるあの味が恋しいのだ。

肉厚なチャーシュー。手打ちの太ちぢれ麺に絡む醤油味のスープ。さまざまなラーメンが流行る中、あの昔ながらの味と変わらぬ美味しさにどうしても心惹かれる。時々実家に帰る際は、必ず親とラーメン屋に向かう。昔はあんなに親とのラーメンを嫌がっていたのに、ふるさとで親と食べるラーメンに心も身体も満たされるのだ。

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私が今1人で暮らしている土地にもふるさとのご当地ラーメン屋があるが、まだ行ったことはない。やはりその土地で食べる美味しさだったり、その土地に行くまでの過程を楽しんだり、「ラーメンを食べること」以外にもふるさとを思う時間を大切にしたいという思いがあるからだ。

そんなの綺麗事だ、なんて言う人もいるかもしれないが、通販で簡単にラーメンを買える便利な時代だとしても、私はやっぱり通い慣れた思い出の場所に足を運んで食べるからこそ、更に美味しく感じられると思う。
その価値観は人それぞれだが、それが私の地元に帰る大切な理由の1つになり得る。その思いは、年に数回のお楽しみにとっておきたいのだ。

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寒い季節は特に地元のラーメンが恋しくなる。子どもの時に食べていたあの味を、子どもが生まれた友達は家族で食べに行っている。引き継がれていく味だ。

私の中で、どのラーメンよりも美味しくて推しのラーメン。ふるさとの地名を目にするたびにそのラーメンが思い浮かぶということは、私も立派なラーメン好きなのかな?なんてことを考えながら、ニヤついてみる。次の帰省を楽しみにしながら、今度はどこのラーメン屋に行こうかと考えている自分がいる。

学生時代の思い出が甦る。家族や友達と食べた味。何気ない日常に食べていたあの味。嬉しい時も悲しい時も私達と共に在った、忘れられない大切な「ふるさとの味」。