今年、私が一番奮発したもの、それは顔の矯正サロンに払った6万円だ。

元々顔が非対称なことがコンプレックスだった。マスク生活とはいえ、後に残る写真を撮る時に限ってマスクなし。写真で見る自分の顔が嫌いで仕方なかった。

本当に効果があるのかも分からない。初めての一人暮らしでお金に余裕なんてないかもしれない。それでも、たとえ毎日もやししか食べられなくても、それでコンプレックスがなくなる可能性をもらえるのなら、払ってもいいと思った。
2022年4月、財布の紐が硬い私の、記録的な大出費だった。

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そして、つい先週そのサロンに通い終わった。まだ完全な対称とはいかないけれど、かなり非対称感は薄れたし、顔も浮腫みにくくなった。目つきもどことなく優しくなった気がする。
思わぬ副産物もあった。常につきまとっていた頭の重さや目の疲労感が薄れたのだ。なくなって初めて、自分がどれほどの重荷を抱えていたかに気がついた。気がついたことで、胸まで軽くなった。写真だって、少し自信を持てるようになった。

今回テーマが出されるにあたって、100万円でやりたいことを考えてみた。
貯金以外で考えるなら、どうせなら旅行とか、何か大きなことに使いたい。せっかく時間のある大学生なのだから、自己投資に使うのはなおいい。今しかできない使い方をしたいし、すべきなのだろうと思った。
でも、それらとは無縁だけれど、私にとってとても魅力的な使い道が頭をよぎった。
脱毛、O脚矯正、ほくろを消すこと。気になっているけれどできないこと。もし、今の自分のコンプレックスを消せたら。モデルのように颯爽と、晴れやかに街を歩く姿を想像した。あのサロンに通った時のような晴れ晴れとした気持ちを思い返した。うっとりと想像を膨らませて、でも、と、ふと現実に帰った。

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今時、医療脱毛でも安ければ20万くらいでできる。矯正やサロンは高くても10万だ。安い。私のコンプレックスを消すのに100万は多すぎる。
6万円であんなに勇気を振り絞っていたのに。生活を切り詰めないと断ち切れないほどの欠点だったはずなのに、100万との相対評価をした途端、あの時の決心がとてつもなく仰々しいものに思えてならなかった。

実際にそれだけの額が手元にあったら、使い道はきっと美容とは全く異なることなのだろう。だが、少しは楽観できる視点を知っても、嫌なものは嫌だ。セルフケアで改善できる努力はしたい。それでも無理そうなら、有意義に使うべき100万円とは別に、プラスアルファで稼げばいい。
諦める必要はきっとない。大学1年生、時間はまだたっぷりある。世間的にすごい、立派だともてはやされるのとは違うのだろうけど、美容だって今やれば、それは今しかできなかったことだと言えまいか。

2022年12月、ありもしない100万円で少し救われた気持ちになった単純な私なのだった。