もうすぐで2022年が終わる。
この1年を振り返って、私が成長できたことは何かあっただろうかと思い返してみる。
成長できたこと、新しく出来るようになったことあったっけ……。

あ、そうだ。あった。
仕事では昇進して人生初の役職をいただいたり、今まで触れることができなかった猫に触れて初めて一緒に遊ぶことができたりした。他にも1人でキッチンラックを組み立てられるようになったり、初めて日本株を購入したり、アロマテラピー検定1級を思い切って受験して合格できたりもしたんだったな。
振り返ってみると1年の間にも新しく始めたことやできるようになったこと、成長できたことは自分の思った以上に見つけられた。
中でも猫と触れ合えることができたのは、私の中でのハイライトだ。
部屋に猫の日めくりカレンダーを置くくらい猫のことは好きな私だけど、ずっとそんな猫にどうしても触れることができなかった。それにはあるトラウマがあった。

◎          ◎

「あ、猫さんだ」
小学2年生の頃、下校中の私は自宅まであと50mのところで3匹の野良猫と遭遇した。
数ヶ月前に引っ越してきたこの地域は野良猫が多い、と聞いたことがあったけど、一度に3匹も遭遇するとは思いもしなかった。
今まで猫や犬などの動物を飼った経験も触れ合った経験も皆無だった当時の私はどうしていいか分からず、その場で固まってしまった。

……。3匹のうちの1匹である、少し体が大きめの黒猫とぱちりと目が合った。
そろそろと、しっぽを縦にぴーんと伸ばして近寄ってくる。
残りの白黒模様の猫と縞模様の猫も後からついてきた。
「にゃぉーん」「みゃあぁ」「みゃぁおぅ」

かわいいけど……どうすればいいんだ。あと少しでお家着くのに……。
触ったら噛まれちゃうかな?えー分かんないし、ちょっと怖いよ……。

動けない私の足元を、3匹が八の字を描くようにゆっくりと歩き始めた。
もう目前の角を右に曲がれば私の家なのに、猫と触れ合ったことがなかった私はどうすればいいのか分からず、数十分間道路で固まって3匹の猫たちが離れていくのを待つしかできなかった。
きっと遊んでほしくて近寄ってくれたであろう猫達は悪くないのに、私は少しトラウマを持ってしまった。

◎          ◎

猫と仲良くなりたくて触れたくても、自分の中にある恐怖心が勝ってしまい、それがなかなかできない。友人が抱っこしてくれた状態で恐る恐る、そっと撫でることが大人になった私の精一杯。当時付き合っていた人が猫が好きで、自分もいつかは猫と触れ合いたいと思っていたけど、もう仲良くなることはこの先難しいのかな、と半ば諦めていた。

そんな当時付き合っていた人と別れて心がボロボロになっていた時、いつも私の話を聞いて励ましてくれていた、私にとってもう一つの家族のような存在である昔から親交のある家族が「一度心を休めるために遊びにおいでよ」と優しく声をかけてくれた。
藁にも縋る思いで訪ねると、いつも私を励ましてくれる温かい家族と一緒に3匹の猫と1匹の子猫が出迎えてくれた。

猫に恐怖心を持っていた私に彼女たちが配慮してくれて最初は距離を空けていたけど、部屋で思い思いに過ごす猫達と一緒に過ごすうちに、不思議と私の足元をするりと通ったり、私の隣にゆったり座ったりしていても気にならなくなっている自分がいた。
「のんびり過ごしてたのにいきなり知らない人間がやってきて、きっと恐怖心はキミ達の方が大きいよね、ごめんね」
大きく伸びをしている猫さんにそうつぶやくと、聞こえたのか「うにゃぁおぅ」と返事が返ってきて思わず笑ってしまった。
もう私の恐怖心はほとんど無くなっていた。

◎          ◎

私にとって兄のような存在である彼が、子猫と遊んでみない?と優しく声をかけてくれて、撫でるのが精一杯だった私がいつの間にかおもちゃで遊んだり、だっこしたりできるようになっていた。その間も不快にさせない触り方や猫の仕草をたくさん教えてもらった。
温かい家族に囲まれたくさんの猫達と触れ合い、帰る頃には別れが寂しくなるくらい私はたくさん励まされて元気をもらえた。

今年は結婚まで考えたくらい好きだった人と別れて、無意識で赤信号を渡りそうになったことがあるくらい心がボロボロになった。その時にじっとりとかいた汗もきっと忘れないし、好きだった人に明るい未来、色んなものを失ってばかりの1年だとその時は思った。
だけど結果的に振り返ると、猫と初めて触れ合えることができたり、逞しく1人で家具を組み立てることができたり、新しい資格試験に挑戦したり、失う事ばかりじゃなくて得た事もたくさんあることに気付けた。

ある出来事の瞬間だけを切り取ると、苦しいことも受け入れられないこともたくさんある。
だけどピンチがチャンスに変わる事だってあるし、振り返って初めて成長できたことに気付けることもある。
成長できたことにいつも目を向けられるように、これからも毎日を大切に生きていけるような自分でありたいと思う。