「唄さんってピンク色が似合いそうですね!」
先日、職場の後輩から言われてびっくりした。ピンク色のものなんて一つも持っていなかったからである。

私は、幼い頃からどちらかと言えばピンク色よりも水色や青色が好きな子どもだった。初めて買ってもらった自転車も水色だった。お気に入りのコートは今も昔も綺麗なブルーだ。
着る服も淡いピンク色とは程遠く、はっきりとした原色かモノトーンが好みなのである。

そういえば、と思い出す。
結婚するときに和装の写真を撮る際も、色打掛を緑にした。赤が一般的なのだけれど、私は赤ではなく、青や緑が着たかったのだ。

家族には「え、緑なの?赤じゃないの?」と驚かれたけれど、すごく素敵な色打掛で、何度写真を見返してもこの色にして良かったな、と思う。とても迷ったけれど、自分で選んだ自分の好きな色を着ることができて嬉しかった。
「普通、色打掛は赤色だから」という理由で赤色にしていたら、後悔していたと思う。

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私が幼い頃は、女の子といえば赤が一般的だったランドセルも、今は様々な色がある。
小学校に通っていた際、下級生の女の子が一人だけ違う色のランドセルで通学していたことがあった。当時は、赤以外のランドセルを使用することが珍しかったので、話題になっていたことを覚えている。

やっぱり「一般的」「普通」ではないものを選ぶのって少し大変なのかもしれない。
でも、「普通」や「常識」は誰が作ったものなのだろうか、とふとしたときに思う。
「普通はこうだから」「こうするのが常識だよ」と幼い頃から育てられてきたし、職場でもそう教わってきた。

特に、就職してからは、「こういった女性であれ」と「普通」の枠に抑え込まれているように感じたことが多々あった。
新卒で初めて入った部署の管理職との面談では、「うちの職場の子は最近、みんな結婚ラッシュだから。結婚の波に乗り遅れないようにね」と言われた。
そうかと思うと、次の上司は「入社してから3年は、その後のキャリアに影響するから結婚するべきじゃない」と平気で言う人だった。私は、どんどんと職場に息苦しさを感じるようになった。

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入社してから数年、私はずっとお付き合いをしていた方と結婚することになった。
婚約したことを周囲に話すと、先輩からは「どうせすぐ産休に入るでしょ」と言われた。本人は冗談めかして言ったつもりだったのかもしれないけれど、あ、私はキャリアから外れたのか、とぽっかり心に穴が開いた気分だった。
私は、社会が、会社が「普通」という年齢で結婚して、周囲の迷惑にならないタイミングを図って取らないといけないのだろうか?
いや、そんなの無理だ、と思った。

それまでずっと、周囲の「当たり前」「普通」に何とか合わせるような生き方をしてきてしまったけれど、私は周囲の顔色を伺うのをやめた。人生の選択は、そのタイミングも選択肢もきちんと自分で選んでいこう、と心に決めた。これを機に転職し、より自分らしく働き続けることができる道を模索中だ。
きっと、あのとき、赤ではなく緑を選ぶことができた私なら、今は自信をもって人生の選択を選ぶことができる気がするのだ。

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そしてかつての私が教わった「普通」も今は変わってきている。コロナの影響でだいぶ社会のあり方も変化した。そして、きっと今「普通」とされていることも、この先どんどん変わっていくはずなのだ。

ランドセルも、服も、人生も、好きなように選べばいいじゃいないか、と思う。
あの頃、当たり前のように赤と黒しかないと思っていたランドセルも、今は選びきれないほどに色がある。きっと、人生の選択も無限にあるはず。自分だけの色の人生にしていこう。