特集:文章を書くということ

年に2回、家族や恋人に手紙を書く。言い表せない思いを文章にする

文章を書くということ

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年に2回の手紙。両親と姉、そして恋人に。
それぞれの誕生日に1枚のバースデーカードを。
クリスマスに煌びやかなクリスマスカードを。

幼い頃から、私の誕生日には、両親と姉がバースデーカードをくれた。
キャラクターが飛び出てくるキラキラのバースデーカード。
クリスマスには、サンタさんが2枚もクリスマスカードをくれた。
もちろん、サンタさんではなく、送り主は両親と姉だ。

手紙を送る文化がある家に生まれた私。
感謝の気持ちとお祝いの気持ちは、文章にして、相手に伝えるものだと感じ取って育った。
自分の誕生日を祝ってもらうよりも、人の誕生日を祝うことが好きで、大切な人たちの誕生日やクリスマスが近づくと、私はその1か月前にはカードを選びに雑貨屋さんに向かい、もらうと「わぁきれい、かわいい」と言ってしまうようなデザインのカードと、カードに合わせたシールを買っている。
1枚のカードに貼れるシールの枚数には限界があって、貼り切れずに残ってしまったシールも私の宝物だ。

◎          ◎

昔付き合っていた恋人にクリスマスカードを渡したとき、「クリスマスカードなんて初めてもらった」と言っていた。
そうか、気持ちを文章で表して、相手に渡すということは、当たり前ではないのだと知った。
私にはその習慣があるけれど、違う習慣を持っている人もいる。
相手からも手紙がもらえる、相手も気持ちを文章にしてくれると思い込んでいたけれど、その元恋人の一言を聞いてからは、「私が伝えたいから送るんだ」と思うようになった。
「えっ、手紙!?ありがとう。嬉しいけれど、用意していなかった」と言われたら、笑顔で「うん、私が書きたいだけだから大丈夫」と伝えている。
なにか機会があるときにはやっぱり手紙を送りたいと思うのだ。

昔、仲が良かった男友達が、アイルランドにワーキングホリデービザで渡航したとき、私は羽田空港までお見送りに行き、「いつもありがとう、頑張ってね」と手紙を渡したことがあった。
彼が日本に帰ってきてから、「あの手紙泣いた」と言っていたのか、「あの手紙泣きそうになった」と言っていたのか、もう記憶はおぼろげだけれど、私が何を書いたのかだけは鮮明に覚えている。

◎          ◎

言葉には力がある。人の気持ちを伝えるという力が。
長い文章でも、たった数文字でも。
ドラマや映画で聞き慣れてしまった告白の言葉さえ、目の前にいる人の口から出てきたら感動するものだ。
「好きです。私の彼女になってくれますか」
大人になってから、絵に描いたようなちゃんとした告白をされたのは、実は今の恋人が初めてだった。

言葉で伝えることが大切だと分かっていても、大人の恋愛はどこか照れくさくて、告白せずに「自然とこうなったよね、付き合っているよね」とお互い少し気持ちを曖昧にしながら関係性を築き上げてしまったりする。
だから、私より少し年上の、20代後半の大人が、「伝えたい、でも上手く伝えられるかな、受け止めてくれるかな」と駅までの帰り道で、告白のタイミングを伺いながらそわそわしていたことも愛おしかった。
Instagramで自慢したくなるようなおしゃれディナーを食べたときよりも、ブランド品をもらったときよりも、記憶にしか残せない、彼からの告白の言葉が、とても美しく、嬉しかった。

◎          ◎

思ったときに伝えなければ、言葉の力は十分に生かされない。
思ったときに伝えなければ、「あの時言っていればよかった」という後悔が残る。
だから、私は感情が生まれたときに言葉にして伝えるようにしている。
仲の良い友人や家族には、「ありがたいな」と思った瞬間に「ありがとう」と言うし、「好きだなぁ、愛おしいなぁ」と思ったときに、恋人には突然「好き」と言ったりする。
一番大好きな母親には、「大好きだよ」と後ろから抱きつくことさえある。
何の予告もなしに、特に用事もない日曜日に、20代の娘から抱きつかれる母親。
びっくりするわけでも、「えっ、なによ急に」と言うわけでもなく、ただ「はいはい」と言ってくれる母親。

人生は、言葉では言い表せないほど幸せで、言葉では言い表せないほど嬉しく、言葉では言い表せないほど儚い。
「言葉では言い表せないほど……」という表現があって、気持ちを伝えるために言葉があるけれど、時に私たちは言葉の力を超える感情を抱くことができる。
そんなとき、言葉に上手くのせられない気持ちを、私たちは文章という形で、長く綴ってしまうし、無駄に悩んで準備した贈り物に込めるのだと思う。

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