「俺と付き合ってほしい!」
「魅力がないから付き合えない」
7年前、私は彼の告白をバッサリと断った。正直、ただごめんなさいと断るよりも、数倍残酷な断り方をしたと思う。
でも私は、その告白を断った彼と2023年に結婚することを決めた。

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彼の見た目は中の中。少し小太りで高身長でもない。最終学歴も私の方が高く、年収も私とそれほど変わらない。大雑把な生活をしていて、洗い物は溜まっていて、食べ物もすぐこぼす。私の理想とは程遠い人だった。
初デートの養老の滝では、彼は途中で軽い脱水症状になり、私は一人で上まで登り、滝を見に行った。私が手を繋ぐから一緒に上まで登ろうと声をかけたが、無理だと断られた。
後から聞いたら、彼は初デートだと気合を入れてお風呂に長居したようで、水分を取らずに来て脱水症状になったようだった。あまり頭もよくなさそうだった。
そんな印象から、7年前はバッサリと付き合うことも断ったのだ。
辛辣な言い方だったが、本当に魅力を感じなかった。容姿端麗で頭がよく頼りになる男性に少し憧れを抱いていたこともあり、理想とのギャップが大きすぎた。

でも、一緒に過ごすうちに少しずつ彼の魅力に気づき始めた。

彼は私のことをいつも考えてくれていた。
体調を崩したらスポーツドリンクや薬、熱さまシートを買ってきてくれた。休みの日には職場が近くても遠くても関係なく迎えにきてくれた。仕事が長引いてしまって2時間も待たせてしまっても文句ひとつ言わなかった。仕事で疲れた姿を見せるとアイマスクを買ってきてくれていた。一緒に買い物に行くと、好きなのあったら買うよと声をかけてくれた。欲しいものが2つあって手に取って迷っていると、2つとも買ってくれた。そのうち私の好みを覚えて、このジュース、この前安かったから買っておいたよと、くれることもあった。
私が我慢していることや大丈夫なふりをしていることを、スマートに気づくことができる人だった。
彼は、私以上に私のことを大事にしてくれる人になっていた。

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正直、彼と一緒にいてもほとんどときめかない。結婚相手の彼には恋心はない。かっこよくもない。何か特別に周りと比べて秀でてできることがあるわけでもない。
でも包み込むような優しさがあった。かわいくぽっちゃりしたゆるキャラのような感じがして、かっこよくはないが、かわいらしいと思うようになっていった。そんな彼は、ただなんとなく隣にいるだけで癒されて、安心できる人になっていた。
ドキドキしたり、ワクワクしたりは少ないけれど、彼と一緒に過ごすなんでもない時間は穏やかで、どこか安心できる。彼の柔らかい包み込むような手が、器の広い心が、いつの間にか好きになっていた。

彼の魅力は見た目や能力ではなく、心にあった。
初恋の人と結婚したんだ!と聞くと、すごいなぁと思う。
私は初恋どころか、恋をしていない相手と結婚する。でも、それが間違っているとは決して思っていない。
初め、魅力がないと断った彼と時を重ねて魅力に気づき、結婚へと踏み切る。
コロナ禍で先延ばしにしてきた結婚。仕事が忙しいから、まとまったお金がまだないから、まだ自由に生活したいからと何かと理由をつけてないことにした結婚をする。私が30歳という節目の年齢になる前に。

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「2023年、私は魅力がないと突き放した彼と結婚をします」
そして、そこから私は彼と新しい一歩を踏み出す。
きっと幸せなことばかりではない。すれ違ったりぶつかったり苦労することもたくさん出てくる。でも、私は彼と人生を共に歩んでいこうと決めた。
彼とともに、ステキな家庭を築けるように、これからも迷って悩みながら前へと進む。