年末のある日。仕事帰りの道を歩きながら、何気なく周囲を見渡した。
人通りが少ないから、少しくらいマスクを外してもいいだろう。そう思い、マスクを外し、内に溜め込んだ空気を吐き出した。
息が白い。その空気の色を見て、懐かしいと思ってしまった。同時に、毎年当たり前に発生する現象に懐かしさを感じてしまったことに驚いた。
ここ数年間で、マスク着用をはじめとした感染症対策が日常化した。様々な場面でその変化を感じていたはずだ。それなのに、日常とすら感じていなかったことに対して、大きく動揺してしまった。
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コロナ禍の前は、周囲の人々からよく「行動力がある」と言われていた。大学に進学して、自分の意志で自由に行動できることに喜びを感じるようになった。特に、海外に興味を持っていた私は、旅行や授業、留学など、一年に一回は何かしらの形で他国を訪れていた。
また、勉強や作業をしたい時は、大学や図書館、カフェによく行っていた。環境が変わることで、タスクに集中できることに気づいたためだ。
このようなかつての日常が、今では理想となってしまった。海外旅行どころか、国内旅行にも行くことがなくなった。
感染症対策さえすれば大丈夫と思いながらも、人の多さやマスクを外して会話をする他人を見ると、長時間その場所にいることにためらいを感じてしまう。
コロナ禍以降の私の行動範囲は狭まり、「行動力がある」と言われることはなくなった。
そんな胸中ではあるが、2023年は「移動する」一年にしたい。私が一番満たされていると感じる瞬間は、何かしらの移動が伴うものなのだ。社会人3年目を迎える今年は、移動をすることで、少しずつ行動力を取り戻したい。
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まず、旅行をする。日帰りでもいいから、国内を旅したい。計画を立てるだけでワクワクする私は、それをモチベーションに仕事に臨めるだろう。
平日に休みがある仕事をしているので、観光客が少ない平日に一人旅をしたい。平日割などが使えたら最高だ。旅先の風景や文化を楽しむだけでなく、行き帰りの移動の時間で積読を消費したい。旅行ができなくても、ホカンスを楽しみたい(この言葉を編み出した人、天才だと思う)。ホテルに滞在することで、旅行している気分を味わいたい。
つまるところ、非日常に逃避する日常を取り戻したいのだ。私が旅行する時は、大体落ち込んでいる時や、自分を客観的に知りたい時。パンクする前に、意識的にガスを抜いていきたい。
また、過ごす場所を増やしたいと思う。コロナ禍になってから、自宅であらゆることを済ませようとした。しかし、飽き性の私は、自宅で過ごすことに飽きてしまった。お籠り生活でも積極的に取り組んでいた資格勉強だが、気づいたら先延ばしになっていた。流石にもうご時世を言い訳にしたくないな、と思うため、資格勉強を再開したい。自宅での勉強に飽きたら、カフェでも図書館でも、集中できるなら移動してでも取り組んでいこう。
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もし、経済的余裕ができたなら、引っ越しも考えている。現在の住居は一目惚れして選んだものだが、ワンルームであることがネックだ。食事、仕事、勉強、趣味、睡眠。あらゆる行動が一つの空間で完結してしまい、それぞれの行動の境界線がぼやけてしまう。よって、「ながら」行動が生じているのが現状だ。さらに、ワンルームでは収まらないくらいモノが増えた。その大半は書籍だが、私にとって書籍は大切なものなので、簡単には手放したくない。これらの課題を解決するには、住む場所を変えるのが手っ取り早いだろう。引っ越しできなくても、生活習慣を改善するための工夫をしていくつもりだ。
移動する人々、旅行先で撮った写真をSNSでアップする知人や街中で増えてきた外国人観光客を見ると、羨ましいと思ってしまう最近だが、妬むだけでは何も変わらない。
私のかつての日常、そして、新たな日常を築くために、身も心も軽やかに過ごしていく一年にしたいと思う。