1月3日、実家から帰宅し、仕事初め嫌だなぁと思いながら自宅でお煎餅を食べてゆっくりしていた。
すると突然、LINEが鳴る。元彼からだ。
元彼とは絶縁していた。夜も更け、22時を回ろうとしている。何かあったのかと思い、電話に出ると、「何してるの?何かあった?今から行く。待ってて」と。
電話が切られたが、意味が分からずトーク画面で確認をする。何か勘違いをしているようだ。

◎          ◎

私は「大丈夫だから、ちゃんとお家に帰りなね」。
ラインを送り放置していたのだが、「もうすぐつくから」と返事がくる。
チャイムが鳴った。
ドアを開けると、頭に雪を積もらせた彼がいた。
「俺が言えることじゃないけど、大丈夫?」と、誤解の経緯を話してくれた。
どうやら彼は別れてから私が援助交際をしていると勘違いしていたようだ。
そんなことしていないし、するつもりもないと言うと、今度は彼は自分の話をし始めた。

今日は新しくできた彼女の実家に行き、挨拶をし、初詣に行ってきた。彼女の母に嫌われているようで、当たりが強いので嫌だった。ご飯をこぼしたけれど、本人がいる前で怒らなくても良いじゃないか。彼女がお土産はお酒のセットがいいと言うので彼女の父へ買っていったが、高くてお金がなくなってしまったと、矢継ぎ早に話していく。
どこからどう、突っ込んでいいか分からない。
「相手の家族にお土産を持っていくのはいいことじゃない?」
と言うと、「そうかな」と納得したようだった。

◎          ◎

落ち着いたようなので、そろそろ帰りなねと促すと、駅まで送ってコールが始まる。
私が、夜中で危ないし、明日から仕事もあるから行きたくないと伝えるも話を聞かない。
私を抱きかかえて、玄関まで連れて行こうとする。
こうなったら止められないことを忘れていた。私は抵抗する。以前は彼にとっても私にとってもじゃれ合いのひとつだったが、今は違う。そのまま縺れて、押し倒される。
取っ組み合いをしながら、行く、行かない、のやり取りをする。
そうするうちに、彼が額にキスをする。頬にキスをする。流石に唇はまずいと思って死守するも、力で敵わないのでその他は諦め、犬に舐められたと思っておくことにした。

ひとしきり舐め回され、諦め、駅まで送ることを了承した。嬉々として喜ぶ彼をよそに厚手の服を重ね着し、支度をする。

キンと冷えた駅までの道は、私が彼に八つ当たりしながら帰ったが、それでも楽しかった。
私が「今度何か奢ってね」と言うと、彼は「うん、迷惑かけちゃったから、焼き肉奢るね。じゃんけん制度で勝った分だけ負担する」と言って笑っていた。
家に帰り、片付けながら鏡をみると、顔が痣になっていた。
LINEで彼に伝えると、申し訳ない、と言っていた。一層仕事が憂鬱だった。

◎          ◎

その後もLINEはポツポツ続いていたが、何日か空き、彼にご飯の予定を聞いてみた。
彼は「確か、奢るって話になってたんだよね。ごめん、今お金厳しくて無理かも」と言っていたので、じゃぁ、来月にする?と聞くと、うん、と返事が返ってきた。
ここから驚いたのだが、次の一言が「そもそも何で奢ることになったんだっけ?」だった。
私は深夜に押し掛け、人の顔に痣を作り、その迷惑を謝ってくれた申入れだと思っていたので、彼は何一つ申し訳ないとも思っていない事が分かり、余りにびっくりして、思わず「は?頭大丈夫?」と返してしまった。
そこから彼からの連絡は一切ない。

数日怒り心頭だったが、これを機に、ブロックすることにした。
別れてからもずっと好きだったのが、今や気持ち悪さが勝ってしまった。
新年早々どっと疲れた訳だが、今年こそは悪運を断ち切って、良縁を結び、心身ともに安定した日々を送りたい。心からそう思った。