5年ぶりに帰った。高校卒業まで過ごした私の故郷。けど、今はもうそこに実家はない。
実家以外何も変わってないのかと思ったら、駅前は栄えて映画館もできていた。知らない広場もできて、おしゃれなカフェも増えていた。
発展していっているのだから、さぞランチ時はより賑わっているのだろうと思ったら、コロナのせいなのかわからないが、静まり返っている。どのお店も閑散としている。町が発展しても、むしろ人がいないこの状況に少し戸惑う。

高校卒業後すぐに留学し、その後転職を3回。地元ではなく東京暮らしの私がなぜ今故郷に帰ったのか。
それは友人に会うため。ただ久しぶりに、なんだか顔が見たい友人に直接会いに行きたいと急に思ったから。ついでに少し時間もあるから地元を見て回ろうとなんとなく思ったから寄っただけ。

◎          ◎

友人との待ち合わせ場所から、電車で約1時間ほどで地元に着く。
途中、私が通っていた学校や、その生徒。見たことがある看板やお店、街並みを見てだんだん学生時代の頃の記憶が蘇ってくる。
「そうだ。実家があった場所から、駅前まで歩いて行こう」
そう思い、元実家の最寄り駅に降りて、家まで歩く。その日は6月中旬。暑かったから、駅近のスーパーに隣接している屋台のソフトクリームでも食べながら家まで行こうと思い、ついでに懐かしのスーパーも見たいと思い、向かう。

「ああ、そうそう、この駐車場」
しかし、駐車場に入ると違和感。
なぜなら駐車場には、ドライブスルー着きのモスバーガーがあったはずだったのに、なくなって駐車スペースが増えていたのだ。
「……なくなったんだ……」
あまり行く事はなかったけど、あるのが当たり前だと思っていたので少し衝撃を感じつつ、スーパーへ。
「あの屋台がない……」
たこ焼きやお好み焼き、五平餅に焼きそばを常に売っていた屋台がない。
「え、ここもなくなったんだ……」
目的の1つを失い、戸惑いつつもとりあえず中へ。
こちらも店舗名は変わらなくても、やはり中の配置は変わっている。
「東京とあまり物価変わらないじゃん」
と思いつつ散策。出口に着き、ふと横を見ると、こじんまりとした、あの探し求めていた屋台を発見。ソフトクリームもある。しかし、値段があの頃より100円も値上げしていた。
「あの値段だったから買ったのに……」
なんだか買う気が失せて、何も買わず実家へ行くことに。

◎          ◎

「あ、家だ……」
約18年住み続け、その後も度々帰省していた私の家だったベランダには、もう知らない人の洗濯物が干してあった。あの頃の記憶が思い出されてくるけど、なんだか知らない場所にも思えた。
切ないような、悲しいのかなんなのか言葉にできない感情になった。
家が、街が、小さく感じた。

当時よく通っていた別のスーパーに行った。
2階建で100円ショップや婦人服、お花屋さん、本屋さん、パン屋さんが1階にあったのだけは覚えている。しかし、正直2階に何があったのかは忘れた。
「あんなに通っていたのに、忘れてしまうものなのか……」
寂しい思いが込み上げてくるも束の間。
「ここはどこ……」
通い慣れていたスーパーは駐車場も大きくなり、中にユニクロや無印が入った別の商業施設になっていた。
なぜだかわからないけど緊張感と、悲しさなのか。足取りもゆっくりとしたまま中に入る。
記憶に全くない内装。とりあえず見てみる。
「なんか見たことあるお惣菜だ……」
「このお弁当好きだったな……」
所々に当時のものがあってホッとし、外へ。
外観もすっかり変わってしまい、ここがどこなのかわからなくなってしまった。
一番栄えている駅までGoogleマップを使う羽目に。
まさかの地元で迷子。
18年は住んだのに、地図アプリに頼るとは……。

◎          ◎

「わたしのふるさと」は変わっていた。発展していた。
もし私もそこに住み続けていたなら、この変化はありがたかっただろう。
けど、地元を離れた身としては変わらないでほしかった。
昔を懐かしみたかった私としては、この変化についていけなかった。

ただ、街は変わっても、変わらずそこにいる友人はいる。
だから「わたしのふるさと」は場所ではなく、今後は友人とほんの少しの名残が、私を昔に戻してくれる「わたしのふるさと」になるのだろう。