我ながら物欲が無い方だと思う。
ブランドにも興味が無いので、財布や鞄も買い物ついでに安くて可愛いものを手に入れる。会社で着けている腕時計なんて990円の大特価で、それを着けながら後輩に「これ、990円で買ったの!すごくない??」と言いふらすような、兎に角身の回りに対して無頓着な女である。
もしもいきなり100万円が手に入ったら、ちょっぴり贅沢なご飯でも食べて、あとは数字の増えた通帳を見ながらニヤニヤすることだろう。
しかし、その100万円の使い道が必ずしも自分の為である必要が無いなら、私はその100万円をドンと使って、彼氏にプロポーズをしたい。

プロポーズを待っているけど、彼はとても堅実で

夢見な私は、彼氏にプロポーズされる日を、息を潜めて待っている。内容に大きく期待をしているわけではないけれど、その日が思い出に残れば嬉しい。息を潜めているのは、自分から急かしてしまうことによって相手が不本意なプロポーズをしてしまったり、はたまた「やろうと思っていたのに」先方から言われることでやる気を無くしてしまう、などのリスクを避ける為である。

とはいえ、実は今の彼氏とは結婚の話題が全く出ていないわけでもない。しかし夢も無い。
彼氏は大変堅実で、双方の不安点を取り除いてからでないと結婚はできないと断言している。一緒に住むにあたっての不安、将来の仕事やお金について、住居について。主にそれらである。なので時々話し合いをして、時々喧嘩をしている。今はプロポーズよりも少し前の段階だ。
彼は普段から調べたり計画を立てるのが好きな人である。結婚も旅行と同様、下調べをしてからでないとその地へ赴けないのだ。分かっているけど、あまりにも現実的で力なく倒れ込んでしまいそうになるのも本音だ。

資金があるなら、私から最高のプロポーズをしたい

元々、静かにプロポーズを待っている理由なんて「思い出として残したい!」という邪な気持ちからである。あるいはもしかすると『プロポーズをしてもらえる女性は幸せ』という昔ながらの固定観念も染み付いているかもしれない。実際、女性から男性に矢印が向くと『逆プロポーズ』と言われるくらいだ。要は完全に受け身なのだ。

しかし折角100万円をいただけるなら、その資金を行動力に投資し、私が最高のプロポーズをすることで一生の思い出を作ってやりたい。これは彼氏の為だけでなく、『プロポーズを一生の思い出にしたい』という自分の為でもあるのだ。

例えば空の上なんかも良い。夜、貸切のヘリコプターで飛んでいる最中に、箱をパカっと開けて告白する。箱の中には高級な腕時計が入っていて、返事が「YES」ならば腕時計を着けてあげるのだ。ある程度質が良ければ修理をしながら相当長く使えるだろうし、婚約指輪ならぬ婚約時計として、私たち2人の時を刻み続けてくれるに違いない。

プロポーズは人にもよるが、サプライズ重視であれば『如何に悟られないようにするか』が重要である。突然高級なディナーに誘えばドレスコードが必要になってくるので行き先を言わざるを得ないし、普段そんな場所に行かない私たちが急に出向くことで「今日なんかあるな?」と察してしまうに違いない。
なのでヘリコプターに乗る前はかしこまったデートは止めるが吉だ。水族館に誘えば良い。服装も問わない上に、悟られることなく良い感じの雰囲気になる。彼氏は写真が好きなので、水族館を退屈に感じることも無いだろう。水族館からのヘリコプター。最高の思い出になりそうだ。 

いろいろ考えてみると、想像以上に気力が必要だ

ここまで考えて気が付いたが、プロポーズは想像以上に気力が必要である。
そういえば会社の先輩には、プロポーズをすると言って半年以上経っている人もいる。かなりのサプライズ好きならまだしも、ここまでの金銭と労力を使って尚、100%の了承を得られるとも限らないのだ。これは躊躇するに決まっている。
私は先ほど彼氏に「夢がない」だの「つまらない」だの散々言っていたが、一歩一歩進む方が当たり前である。ノリで「結婚しよ。ブライダルフェア行こ」と言う人の方が断然不安だ。

やはりお金というのは凄い。架空の100万円を手にしただけで自分の行動力の変化に気付かされただけでなく、今までぼんやりと待っていたプロポーズについて見直すきっかけにもなったのだ。
残念ながら実際に資金を手に入れたわけではない。今私が出来ることはプロポーズまでの道のりを、そしてその後も、隣で歩み続けることである。