100万円、アルフォートの箱にピッタリ収まる額だ。大きさ的にもう少し入るけれど、四捨五入すれば100万だから100万ってことにしよう。

「はい、自由に使っていいよ」とアルフォート......じゃない、100万円の束をもらったら私は何をするだろう。真っ先に貯金が頭に浮かんだが、それでは夢がない。チラシの裏へ走り書きするノリで考えてみよう。

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……難しいな。本やゲームといった趣味に関するほしい物は出てくるが、”自分自身”に対して何が必要か考えるのは苦手である。化粧品やスキンケア用品はプチプラで済ましているし、服も背が低い上に足のサイズもお子様なため合うものがなかなか見つからない。
インテリアも黒系か無印良品の家具で出来上がっている。気分転換に住む場所を変えるのもありだが、引越し費用ですぐ終わってしまうだろう。

どれもピンとこないのでSwitchを起動させた。が、本体とソフトの更新が始まってしまった。まいった、しばらく使えない。少し放置するとこれだ。機体を机に起き、椅子をぐわんぐわん動かしていると姿見に自分が映った。

丸メガネに姫カットボブ、色も変化がわかるくらい染めたのはいつぶりだろうか。髪をまとめるとピアスだらけのいかつい耳が登場する。この見た目にもだいぶ慣れてきた。

この勢いで服と靴、タンスの中身まるごと一新したらどうなるだろう。普通のお店もいいけれど、いっそのこと中野や高円寺にあるようなアングラな古着屋やセレクトショップを巡って、「これだ!」って思ったのを選んで着回すのも楽しそう。もちろんアクセサリーも買うし、ピアスも増やす。

それでも箱の体重は減らないから次に執筆環境を整えよう。物書き専用のタブレットはあるが、同人活動や他の創作活動がしやすいようにスペックのいいノートパソコンと、編集アプリを買う。

アナログ環境も大好物だからトラベラーズノートと便箋と万年筆を買って、かわいいマステも揃えて創作仲間に手紙を書こう。
そうだ、ちゃんとしたランタンも買おう。5万くらいの本格的なやつ。ランタンの明かりに照らされて焚き火のBGMを流して珈琲を飲む。作家みたいで素敵。書いてるだけでワクワクする。

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出てきたじゃん使い道。今まで挙げたもの全てに使っても半分くらい残っているだろうから、残りはダーリンと旅行に行こう。
贅沢に1ヶ月かけて温泉地巡りをするんだ。旅館内のお土産屋でポストカードを買ったり、商店街で変な商品を見つけたりして大喜利して、友人にサプライズで送ったりしたい。
部屋はどうしようかな?VIPルームにするか、普通部屋にして連泊するのもあり。窓際に机や椅子がおいてある、あの不思議空間でぼーっとしたり本読んだり、詩を書くのもいいな。

学生時代の自分が今の姿を見たらどんな感想を言ってくれるだろう。理想の姿に近づいてる部分もあれば、なんでそうなった?と眉をひそめ突っ込まれることもあるだろう。それに対して私は「これが大人になるってことよ」と言って煙草に火をつけてニヤって笑うんだ。
タイムマシンが開発されたらからかいに行こう。