「もし今、目の前に自由に使える百万円があったなら、私は何に使うだろうか」
上司から依頼された資料作成のためにカタカタと数字を打ち込みながらPCに向き合い、ぼんやり考える。
お世話になっている大切な人達への恩返し、家族や親友との旅行、高校生の時に憧れていた短期留学、車の一括購入……。頭の中で色んな使い道がどんどん広がっていく。
しばらく悩んでいると、机上に置いているアロマディフューザーからキンモクセイの香りがふわりと香った。
ふと思った。もし自由に使える百万円があったなら、私はアロマテラピーサロンを開業してみたい、と。

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私は昨年11月、アロマテラピー検定1級を取得した。
前々から興味があり、過去に講座を受けに行くくらい好きだったけど仕事に忙殺されて、検定試験を受ける機会を失っていた。そんな私だったけど、自分の心がどん底まで落ちた去年の夏頃に香りの力にたくさん助けられ、アロマテラピーを改めてもっと知りたくなって勉強を始めた。

以前投稿したエッセイ『アロマで失恋から立ち直った私は、アロマテラピー検定に挑戦する』の中で私は資格を取得するとその時宣言したけど、毎朝YouTubeで精油の覚え方を視聴しながら出社し、昼は精油の原料である植物の科名を覚え、帰宅後は数時間テキストと試験問題を見ながら練習問題と格闘したり、何種類もある精油の香りの違いを見分ける訓練をしたり。
勉強を始めたばかりの私は「全然覚えらんないけど、こんな調子でちゃんと合格できるんだろうか……」と、宣言したことを後悔しそうになったこともあった。

だけどテキストを3周読み込んだあたりから、YouTubeで聞いていた精油の名前と、植物の科名と、帰宅後に嗅ぎ分ける練習をした精油の香りが点と点が繋がるようにリンクしていき、どんどん勉強して情報を吸収するのが楽しくなっていった。
勉強を進める中で、嗅覚は五感の中で唯一脳にダイレクトに伝わる感覚だから、香りが心や身体に与える影響はとても大きいことを学んだ。自分がしんどい時に助けられたアロマテラピーのメカニズムを知り、もっと深く学んでストレスや不眠などで悩んでいる多くの人達の役立ちたいと思った。

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アロマテラピー検定1級に合格すると、さらにアロマテラピーインストラクターやアロマハンドセラピストなど様々な上級資格に挑戦することができる。その資格を取得すると自らサロンを開いて香育活動をしたり、カルチャー教室で講師をしたりすることもできるそうだ。
もし上級資格取得後サロンを開くなら、まずは精油が欠かせない。精油は植物から抽出した天然の素材だから、小さな瓶に入ったものでも高価なものはたくさんあるし、使用期限も決まっているからきっと様々な香りを購入するだけで相当の額がかかるだろう。まずはどの香りから買い揃えていこうか……。

サロンの開業スタイル1つとっても店舗を構える方法もあるし、車を購入して自分が直接お客さんの元へ訪問するスタイルをとってもよさそう。それなら老人ホームとか、地域のイベントでワークショップを開いたりフットワークも軽く動いたりできそうな気がする。
FPの資格も活かして、心身の悩みとライフプランニングなどのお金の相談、両方解決できるようなサロンもできるかもしれない。
インテリアやサロンのコンセプトはどうしようか、あぁ考えただけで色んな構想が膨らんで楽しい!

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正直、自分の貯金から百万円を捻出することはできる。つまり、自分が資格を取得してその気になればサロンを開く試みをすることは今すぐ可能だ。
だけど自分の努力がようやく評価され、福利厚生がしっかりしている現在の金融業界の職場で、金融について学ぶことが楽しくなっている自分もいる。そして、今まで未経験の業界にいきなり飛び込むには経験もないし知識も浅いから、そこへ踏み出す勇気がまだまだ足りない自分もいる。
もし自分が2人いたら、やってみたいことも続けたいこともどちらも出来るんだけどなぁ、そんなことはあり得ないんだけど。

短大生の頃から毎月先取り貯金を続けてきた薄給の私だから、百万円を貯金する大変さはよく知っている。百万円を捻出することは簡単なことじゃない。
そんな大金だから夢だったサロンを開きたい、親孝行をしたい、結婚式を挙げたい、子供を産みたい、もし病気を見つけたら治療をしたいなどの自分がやりたいことの決断をした時に後悔しないようにこれからも私はお金の大切さを噛み締めながら、未来の自分が大切な決断をする日までコツコツ貯金を続けていきたい。

私の会社は副業禁止だからすぐにサロンは開けないけど、自分の周囲を香りの力で癒したり悩みを聞いたりはきっと出来るだろう。未来の私がどんな選択もできるように、資格を取得したり、精油の知識を深めたり、未来への種まきを少しずつ始めていこうと思う。