「かがみよかがみ」で初めてエッセイを投稿した日から約2年が経った。
自分の気持ちや経験を詰め込んだエッセイを投稿し続けて、先日編集部の方から50本目の採用の連絡があった。

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もともと私は文章を書くのが好きな子どもだったと思う。
夏休みの読書感想文コンクールでも賞をいただいたことがあったし、毎日小学校から出される宿題の日記もその日の出来事をびっしり書いたり、自分の考えたお話を先生に伝えたくてそれを書いたり。先生からの「続きを楽しみにしてますね」というコメントと赤ペンで書かれたスマイルマークにほくほくして、「今日はどこまで書こうかな」なんて考えながら帰路につく小学生だった。

幼い頃から周囲の顔色を伺いがちだった私は、自分の意見を伝えたら周りに嫌われてしまうんじゃないか、という恐怖心が強くて、自分の思いを口に出して伝えることがとても苦手だった。

だからその日の出来事も嬉しかったことも、お母さんにだけに伝える。それでも周りに言えなかった苦しい気持ちや本当は自慢したいくらい嬉しかったことは日記やメモ帳に書いたりして自分の気持ちを処理していた。

年を重ねるにつれて日記帳や携帯のブログ、LINEのメモ機能など気持ちを記すツールが時々変化することはあったけれど、“自分の気持ちをどこかに記録する“という行動はずっと変わらなかった。

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このサイトに出合った時、「『どうしてこんなに頑張ってるのに上手くいかないんだろう』という自分の不甲斐なさや後悔している過去のモヤモヤを、書いて投稿することで昇華できたら。しかも自分のモヤモヤがギフト券に変わるならラッキーかも!」と、昇華したい気持ち8割とギフト券がもらえたらな、という気持ち2割が「エッセイのご投稿はこちら!」のボタンを押していた。

そんな気持ちで投稿した最初のエッセイの採用通知が編集部の方から届いた時には、職場の女子トイレで涙を流して喜んだことを今でもはっきりと覚えている。

今までは自分だけで完結させていたこの気持ちが誰かに伝わったこと、その気持ちに寄り添った温かいコメントがついていたことが、こんなダメな自分でも認めてもらえた気がして、すごく嬉しかった。採用されたエッセイが掲載された日は何度も自分のページを開いたり、著者一覧に自分の名前を探したりもした。

投稿前に原動力になっていたギフト券をもらえたことももちろん嬉しかったけれど、編集部の方の丁寧な添削や、エッセイが掲載された時に自分のページを開くまでのワクワクとした気持ち、私の文章を読んだ方達からの感想の方がずっと嬉しくて、それが今の私の言葉を書く原動力になっている。

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これまでに掲載していただいたエッセイを久々に読み返してみた。
不毛な恋愛をしていた時の苦しみ、ずっと好きだった仕事を辞めざるを得なかった悲しさ、すぐそこまで見えていた幸せが目の前で崩れた時の絶望、ずっと顔色ばかり窺ってしまった不甲斐ない自分の後悔。エッセイを書いた時に閉じ込めたはずだった当時の自分のネガティブな気持ちがよみがえってきた。

その一方で、今までコツコツ努力をしてきた自分への賞賛、私の家族や友達、自分にとっての大切な人たちが私のことを大切に思ってくれると知った時の温かさ、好きな人に「好きです」と言われた時の嬉しさ、仕事ぶりが正当に評価された時の喜び。当時のエッセイを読んで自分は周りから愛されていたなと気付けた喜び、努力が評価された時の嬉しい気持ちも同時に再認識することができた。

今まで掲載された約50本の私の書いた文章たちは、その当時の「私」が感じた気持ちや経験を書いたもので、今の「私」の気持ちや考え方がその時と全く同じかというとそうではない。

その時の自分の気持ちを言葉にし、エッセイにして冷凍保存することで、苦しい理不尽な経験をした時には自分を励まして乗り越え、嬉しいことがあった時にはその時の嬉しい記憶が自分の脳内から消えてしまわないように、言葉にすることで大切にしまってきた。
そして、時々これまでの私が書いた文章を読み返すと当時の苦しい気持ちも嬉しい気持ちも、冷凍したご飯を解凍したみたいに当時のほかほかのままでよみがえってくる。

あぁ、あの時の私、すごく苦しかったな。よくここまで頑張ってこれたな。
この時の私、本当にすっごく幸せだったな。またいつかそう思えるようになりたいな。

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私にとって文章を書くことで、過去の自分も現在の自分もすべて肯定することができる。
このサイトでエッセイを投稿できるのも残り僅か。言葉にすることで自分の苦しみや至らなさにも、向き合わないといけない時もある。幸せだった時を振り返って胸が苦しくなる時もある。

だけど、この苦しみや後悔も未来の私にとってきっと必要不可欠なお守りになるはずだから、今の私が感じた言葉を書き続けていきたい。