田舎にある声楽の先生宅を訪れた帰り道、数少ない電車が目の前で去っていった私はとてつもない時間を無人駅で過ごすことになりそうだったので、丁度そのタイミングで来た、行ったことがない方向の電車にふらっと乗りこんだ。
静かな車内、穏やかな町並み、15時の暖かい日差し、どんどん田んぼが広がっていく窓からの景色を眺めながら右へ左へと揺られる。
なんて心地良いのだろう。ヘッドホンをつけて音楽を聴くことも、スマホを触ることさえ忘れていた。田舎ってどうしてこんなにも魅力的なのだろうか。
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子供の頃は落ち着いた空気の場所、大人を感じる場所が苦手だった気がする。いや、苦手とまではいかなくとも、好んで行こうとは絶対に思わなかった。
本屋さんよりもゲームセンターが好きだし、水族館より遊園地が好きな私だ。静かだとソワソワしてしまう。そう思っていたはずだが、どうも最近の私は違うらしい。最近は専ら静かな場所を好んでいる。
年だろうか。まさか齢19にして老いを感じるとは。人生100年時代の世の中で、今大人の楽しさを知ってしまったらこの先81年どういうモチベーションで生きればいいのだろう。
最近味ごのみとか、前まで魅力を感じなかった筈のおつまみ系お菓子がめちゃくちゃ美味しく感じるし、あんなに毛嫌いしていた大人の登竜門である食料品コーナーの魅力に気がついたし、値段を気にせずに物を買うようになった。幼い頃に「絶対私は大人になっても分からないな」と思っていた大人心が理解できてしまうのだ。この調子なら、きっと数年後には今理解出来ないことも分かるようになるんだろう。大人ってだいぶすごい。
だから最近は、通り過ぎる大人を少しだけ尊敬しながら見ている。
私より年上ってことは絶対私より沢山の経験をしたわけで、それだけでも偉い。沢山経験した方が偉いってわけではないけれど、沢山考えてきた人は物事の理解の深さが違う。大人って子供より知っていることが沢山ある。きっと大人の方が楽しい。
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そんなこんなで成人式に行ってきました。成人式は人が多すぎて怖かった。
この式を経ているから大人は大人を名乗れるんだなとやっぱり感心する。式にはビビっても大人にはなってしまう、なれてしまう。
『20歳』という文字をまじまじと見ていると、18歳はすごく長かったのに17歳らへんを経由した記憶がない気がする。
17歳を飛ばさないでくれ。けど18歳と19歳は私の中で確実にあって、多分自分が年齢を自覚しながら生きてたっていうのと、充実してたってことが大きいんだと思う。自覚を持つって大事。
自分で言うのも何だけど、19歳でこんなに成長出来るんだし、1年前の自分ですら今みたいな人間になるとは思ってなかったから、多分これからもっともっと成長するんだろうな。人生が楽しみすぎる。気がついたら人生が通り過ぎていたなんて悲しすぎるから、1日ずつを大切に過ごしたい。そんな大人になりたいと思った成人の日。
さようならティーンネイジャー、こんにちは大人。
そんな新成人の小さな心の声でした。