皆さんは空港で寝泊りしたことがあるのだろうか?
早朝便のためだとか、なるべく節約して旅行したいからだとか。私は学生の頃、ホテルに泊まるお金がなく、よく空港のベンチで寝て午前の便で旅立つことが多かった。なので、空港で寝泊りすることは当たり前にできると思っていたあの日。
毎年、冬の、特に雪が降っているのを見ると、思い出す出来事がある。

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あれは12月の雪が降る韓国。
当時、私は大学1年生が終わり、日本に帰国するため、金浦空港で次の日の朝8時台の飛行機に乗るため、パソコンで動画を見ながら夜を過ごそうとベンチに座っていた。

いつもは仁川空港を利用していたが、今回チケットを取ったLCCが金浦空港発だった。なのでこれが初めての金浦空港。ただ、規模が小さいだけで、空港というのは変わりない。だから特に何も気にせず、いつものように空港で過ごしていた。

だが、夜11時半頃、気づいた。人気がなくなっていることに。
仁川空港はハブ空港という役割もあるため、常に人が歩いていたが、さすが小さい空港。静まり返っていた。
私は、不安でドキドキしながらも、平静を装いながら動画を見ていた。その時、警備員さんがこちらにやってきた。
「12時でここ閉まるから出て行きなよ」
「えっ?!……わかりました」

わかりましたと言ったが、全然わからない。閉まるの?消灯するの?え、聞き間違い?
私は焦りながらも、聞き間違いだということを願って、一旦そのまま動画を見続けた。
本当に出ていかなければいけないのなら、どうすればいいんだ。さっきより心臓がバクバクし、もしもの対応を考えながら見ていた動画は全く頭に入らない。

そして、2度目の宣告が来た。
「あと10分で閉まるよ」
10分?!本当に閉まるのか……。さっきと違う警備員さんから閉場のカウントダウンを聞き、ようやくパソコンを閉じた。
玄関口に向かうと、さすがは韓国の冬。大吹雪だった。

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所持金は1000ウォン。日本円にして約100円。地下鉄にも乗れない。
搭乗手続きがあるからおそらく朝6時には開場するとして、あと6時間。私はこの極寒の中、夜を過ごすことができるのだろうか……。

当時の私は、モバイルWi-Fiや現地の携帯を持っていなかったため、空港のWi-Fiが使えなくなったら、誰とも連絡が取れなくなる。
人間、追い込まれるとポジティブになれる人と、ネガティヴになる人に分かれるが、私は前者だった。寒いし連絡手段もなく、寝られる場所もお金もないけど、なんだかいける気がする!
ハイになっていたのだった。

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空港のWi-Fiが使えなくなる前に、この状況を実況したい、共有したいと思い、仲の良かった韓国人に連絡してみた。
「今から車で迎えに行くよ!!どこらへんにいるの?」
私はただ単純に話を聞いてほしかっただけだったのに、その友人が家族に話して、迎えに来てくれることになったのだ。

正直ありがたい気持ちもあったが、申し訳ない気持ちと、本当に来てくれるのか、ただのノリなのかと疑心暗鬼だった。
だが、20分くらいで、友人のお父さんが運転して迎えに来てくれた。

友人宅に着いたのは深夜1時。そこからおもてなしが始まった。
寒かったでしょうと、友人のお母さんがご飯と机いっぱいにおかずを並べ始めた。ご飯は美味しく、深夜に食べたら太るということも気にせず食べ、その後はシャワーにも入れてもらい、布団を用意してもらい、友人と一緒に寝た。
朝6時頃、またお父さんが空港まで車を出してくれた。

私はもちろん、感謝でいっぱいだった。だが、それ以上に不思議だった。なんで、こんな遅い時間に、しかも急なことだったのに……。
韓国人だからなのか、その友人・家族だったからかは分からないが、韓国人は情が深いという。
その国民性を実感した時間だった。

毎年冬になると、その感謝の出来事を私は思い出す。
あの6時間を絶対に忘れはしない。