元気でいますか。
笑って過ごしていますか。

私は元気で相変わらず忙しい日々を過ごしています。
あなたを思い出すこともないし、新しい恋に夢中です。
なんて強がりたいけれど、あなたが吸っていたタバコの香り、好きだった洋服のブランド、音楽、一緒に歩いた道。切っても切りきれない日常の中で、まだまだあなたが出てきます。
あなたは隣にいないのにね。

夕焼けが燃えるほど綺麗な海で始まった遠距離恋愛は、夕焼けが痛いほど綺麗な海で2人、涙を流しながら幕を閉じた。
一緒にいる時間より遥かに離れていた時間の方が多い、恋しくて寂しくて愛しくて悲しくて苦しい一年だった。

あなたに言わないと決めていたこと。言えなかったこと。
きっとこの文を読むことはないと思うから、最後にここにあなたへのラブレターを綴ります。
どうかあなたが読みませんように。

◎          ◎

住みたい場所が違う私たち。
それをお互い譲りきれなかったが故に別れを選択した私たち。
あなたが最後の最後に放った言葉、
「後悔すると思うけど、仕方ない」
その言葉が全てだった気がして、何も言えず涙を流すしかなかった。

付き合う前からこうなることはなんとなく分かっていたけれど、好きだったからそれでも一緒にいてみたかったんだ。
限られた時間を精一杯、ただ一緒に幸せに過ごしたかった。

でも幸せな時間を重ねていく度に、別れが近づいてくるほどに怖かった。
これ以上幸せな日々を重ねてしまったら、あなたを失うとき私はどうなるんだろう。
きっと私たちに未来はないんだから、あなたなしでもうまくやれる私でいないとって、依存しないように、強くいないとって。
あなたをこれから先も変わらず大好きでいる自信があった。
だからもう幸せになるのをやめたいって別れる覚悟を決めたんだ。

嫌な部分や不満があったとき、あなたに正直に話して、その度あなたはまっすぐ向き合ってくれたよね。
でも別れを意識してから、話すのをやめて向かい合おうとしなかった。
あなたのこんなところが嫌だったから、別れてよかったって。
そう思えばあなたを少しでも恋しがらなくて済むから。

◎          ◎

あなたの誕生日に渡したメッセージカード、本当はね手紙だったの。丁寧にあなたを想っている気持ちを2枚もの便箋に綴ったの。
これからもできるだけ長くあなたの隣に居たいって書いたの。
でも描き終えて思ったんだ。
ああだめだ。これじゃだめだ。あなたを送り出す準備をしなきゃって、あなたから離れる準備をしなきゃって泣きながらビリビリに破いたの。
それでね、ありきたりな短い文章でメッセージカードに書いたんだ。
「お誕生日おめでとう、幸せな一年になりますように」
幸せな一年にしようねって書きたかったけど書けなかった。

初雪が降った日、1番最初に伝えたかった。
こっちはすごく寒いよ、でもとっても綺麗なんだよ、って伝えたかった。
何度もLINEを開いては閉じた。

そんなふうに私なりの別れの準備して、私の中のあなたを少しずつ消していった。

◎          ◎

あなたは付き合い始めた時から、俺のところに来てくれたら嬉しいって言ってたよね。
でも私は一度もあなたに、私のところに来てとは言わなかった。言えなかった。
あなたが背負っているものの重さをよく分かっているから言えなかった。
慣れ親しんだ環境を捨てて私の元へ来てくれたとして、果たして私はそれを素直に喜べるかな。1mmも悲しませたくない人を悲しませる原因に私がなってしまったら、その上で成り立つ幸せを喜べるのかな。
そんな未来のことを思うと無責任に来てと言えなくて。

この1年間、私の日記帳は日常の出来事を少しと、遠く離れたあなたのことでいっぱいだった。
朝まで電話を繋げていたこと、一緒に絵を描いたこと、旅行に行ったこと、たくさん支えられたこと。
もちろん遠距離が寂しいってことも、あなたが恋しいってことも。

◎          ◎

あなたが泣きながら言った、「もうなにが正解なのか分からない」。
私も分からない。今でもあなたに連絡したい気持ちを抑えてる。
あなたの元に行く決心をしたわけじゃないのに連絡しても、なにも変わらないからしないけどね。
だから私は選択した道を正解にすることにしたよ。
これからももうしばらくはあなたを恋しく思う日々が続くと思うけれど、その先の未来はこの道を選んでよかったって思える未来を作る。

最後の最後のラブレター、もし読んでも知らないふりしてね。
あなたと過ごした時間は何にも変えがたい本当に愛おしい時間でした。