どんな理由があれば、自分の時間を、惜しみなく他人のために使うことができるのだろうか。
私のために、自分の時間を惜しみなく使ってくれた友人がいる。その友人がいたから、今、私はここにいる。

◎　　　　　　　　　　◎

彼女と出会ったのは高校生のとき。２年次のクラス替えで、同じクラスになった。
ちょうどこのとき、私は持病である難病の経過が思わしくなかった。欠席や遅刻・早退が増え、このまま学校に通い続けることができるのか不安に思っていた。
偏見を持たれるのが嫌で、持病については、先生以外には話していなかった。きっかけは何だっただろうか。今となっては正直思い出せないが、とある日から、彼女が、私が休んだ授業のノートを、写真で送ってくれるようになったのだ。それも、私の方から頼まなくても。

休んだ分のノートを見せてくれるよう頼むことは、地味に精神を削る。相手の手間や、時間を奪ってしまうことを考えると、申し訳なさで自分を責めずにはいられない。そして私は、体調不良や通院のために授業に出られないことがとにかく多かった。毎日のように罪悪感を積み重ねた。

授業に出なければノートは取れない。ノートが取れなければ、授業について行けない。仕方の無いこととはいえ、頼むことも精神的にしんどくなり、授業にもついて行けないのならば、私には高校に通うことは無理なのではないかと落ち込む日が続いた。

◎　　　　　　　　　　◎

そんなときに、彼女は私が頼まなくても、私が休んだ分のノートを写真で送ってくれた。私が入院している間も、毎日毎日。「どうして入院しているの？」「具合は良くなった？」などとは一切聞かずに、「見づらいところがあったら言ってね」の一言が添えられて送られてくるノートの写真。

私が学校に復帰すると、彼女は自分の休み時間を使って、私が休んだ実技や実験にも付き合ってくれた。私がこんなに休んでもどうにか授業について行けたのは、全て彼女のおかげだった。どれだけ感謝しても足りない。

その一方で、彼女のその献身的な優しさがつらいときもあった。
どうしてここまでしてくれるのだろう。私はしてもらってばかりで、何も返せていないのに。そこまでしてもらう価値が自分に見出せず、彼女を突き放すように冷たい態度をとったときもあった。

◎　　　　　　　　　　◎

そんなとき、彼女は言った。
「応援したいと思えるからだよ」
治らない病気を抱えながらも、それを言い訳にすることもなく、甘えを許さない私の姿に勇気づけられたのだと彼女は言った。先に勇気をもらったのは私の方だったのだと。
「かわいそうだから助けてあげる」のではない。妥協せず努力しているから、少しでもやりたいことができるように支えたい。

その彼女の言葉を聞いたとき、涙が止まらなかった。「この人のためなら」。そう思う気持ちが彼女の中にあって、その思いが、確かに私を支えていた。

高校生という若い年代で、このような友人に巡り会えたというのは、本当に貴重で、本当に幸せなことだと思う。私にとって一生ものの出会いだ。
見返りなんて関係ない。私も、私ができることで、彼女がやりたいと思うことを全力で応援したい。彼女を全力で推し続けたい。
そんな彼女との付き合いも、もう６年になる。彼女は長年の夢を叶えて、この春から看護師になる。