たまたま行った久しぶりの飲み会の席で、ハメを外しすぎたわたし。酔っ払ってどういう経緯なのかわからないけど、家に持って帰ってきてしまった歳下の男の子。そのまま同じベッドに入った後、当然そういう感じになってしまって。
でもそうなるときに一つ、わたしはめんどくさいお願いをした。

それは、そういう行為は好きな人としたい。そういう行為だけの友人にあなたとなりたくないし、そもそもそういう友人はいらない。まだほぼ初対面で何も知らない人で、わたしのことを好きじゃない人とはこういうことはしたくないし、わたしもあなたのことが好きじゃないからできない。
だからほんとにそうしたいなら、わたしのことを好きになって。わたしにあなたのこと好きにさせてと。

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酔っ払って家に連れ込んできた女からの、急なお願いに、あなたは驚いた顔をして、ちょっと笑った後に「いいよ」と言ってくれた。「じゃあ貴女のことを好きになるから、僕のこともちゃんと好きになってね。これから僕たちは恋人だよ」と。
そんな返事が来るとは全く想像もしていなくて戸惑っているわたしの顔をみて笑いながら、「じゃあ今日はお話しだけして寝ようか」と、結局そのあとは無理に行為を続けようとせず、わたしのことをまるで知ろうとしているかのようにたくさんの質問をしてくれた。
「好きな食べ物は?趣味は?お誕生日は?家族構成は?……」
そして自分の話もしてくれた。
そのあとそっと抱きしめてくれ、「ありがとう。好きだよ」と言ってあなたは寝た。

優しいあなたを横目に、わたしはずっと戸惑っていた。
え?そんなに簡単に恋人ってなるの?なれるの?まだわたしのことを何ひとつ知らないくせに?歳下だから?若さゆえの身軽さなの……?
わたしの頭の中は、ただただ混乱していた。

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でもあなたはそれから、事あることに会いにきてくれる。連絡も毎日にくれる。まるでわたしのことを、本当に好きかのように。
それでもやっぱり不安になる。本当にわたしでいいのかと。たまたま彼女がいないときで、そこでなんとなくタイプな女の子に持ち帰られたから。ちょうどいいから付き合おうと思っただけなんじゃないかと。ただの軽いノリで言っただけ。だからいつかどこかに行っちゃうんじゃないかと。
わたしもわたしだ。好きかどうかわからないのに、好きかもと思ってしまっている。
流されてるのはわかってる。だってまだ何もあなたのことを知らない。
いや、それだけじゃない。「やっぱり違った。好きじゃなかった。」って言われるのが怖いんだ。だからあなたへ惹かれつつある気持ちにストップをかけている。
好きになったあと、捨てられるのは怖い。だからこそこの気持ちの落とし所がわからない。あぁなんてめんどくさいんだろう。

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それでもあなたから送られてくる他愛もないラインや、会いにきてくれた時に抱きしめてくれる腕、頭を撫でてくれる手やぬくもり。だんだんと解されている。そしてもしかしたらと信じたくなる。
この関係は間違いなのかもしれない。でももしかしたらと信じてみたい。私はあなたのことを好きになってもいいんですか……。

でも、そんなことを考えてしまっている時点で、私はきっとあなたのことが好きなんだね。
好きだから、好きだけど。だからきっとこんなにも不安なんだ。でも、きっと不安でいい。
ちゃんといつかあなたに伝えたいな。始まりはこんなだったけど、私ちゃんとあなたのこと好きだよって。好きになっちゃったんだから責任とってよね!って。ちゃんと可愛く伝えたいな。
それまで自分磨きするし、あなたの好きな女の子になれるように頑張るから。だからちゃんと一番近くで見ててね!
わたしね!あなたのことが大好きだよ!