入社して三年、私は未だに会社の組織の中で一番下っ端である。
その一方で、一度業務が始まれば、私は先輩としての役割を担うこともある。
入社年次は一番下、けれど部内での仕事の経験年数はそこそこな私。
入社年次が高いが、部署異動により、経験年数は少ない先輩。
そこにあるのは入社年次と部内での経験年数の差であり、ちぐはぐな先輩後輩関係を生んでしまう要因である。
「今の状況を教えてくれませんか?」
「今は〇〇です」
「あ〜なるほど。わかりました」
そんなやりとりを横で聞くたびに思うことがある。
それは相手が求めている答えではないのでは?と。
けれどそれを真っ向から伝えることはできない、しない。
そうして、いつも心の中でため息をついてしまう。
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私の仕事は常にスピードが求められ、莫大な規定と現況から、相手の必要な情報を最適な量、正確な形で伝える必要がある。
間違ったことを言えば、正直人命にも関わるようなこの仕事において、プロフェッショナルであり続けることはマストである。
私自身、刻々と変化する状況の中で最善は尽くしつつも、最良だったかといえばもっと最良があったのではと反省するのが常で、日々勉強でありそれが普通だ。
一方で、私の仕事は作業になりやすいのが特徴的だ。
言われたことを、言われたようにやる。
それだけでも、仕事の最低ラインとして成り立ってしまう。
それならロボットにさせればいいにも関わらず、人間が配置されている。
その意図を、どうも後輩である先輩方はあまり理解されていないように思う。
好きでこの仕事を追求する私や同期とは違い、意図せず異動してきた人々からは、働きはするけれど最低ラインでいいや、という気持ちが垣間見える。
だからだろうか、私は時々彼らに無性にイライラしてしまう。
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期待するからイライラするのだ、と思うようにしてみるが、それでもその瞬間ごとに最善を尽くしたい私からすると彼らの仕事ぶりは目に余る。
「逆に睡蓮ちゃんが仕事しすぎなのよ」
仕事のできる先輩に相談してもそう返ってくる始末。
私は行き場のないイライラを消化できず、毎日を過ごしている。
私ならここまでいうのに、私ならこうしてあげられるのに。
お客様がより良い環境を過ごすためのプロとしての意識が、それを許せないのだ。
とはいえ、長い間仕事をやってきた彼らには積み上げてきたプライドもあり、入社してそこそこの後輩に面と向かって指導されては面目丸潰れ。
明日には居場所がないだろう。
しかし、それでも貫き通さなければならないことを自分で確立させた。
足りないところでカバーできるところは自分が補うこと。
そして、本当にやらなければいけないところは、きつい言葉になっても言うこと。
私は、大事なものを守るためにこの二つを軸に先輩を演じることにした。
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他人を変えるくらいなら自分が変わればいい。
よく聞く言葉だが、まさにその通りで、足りなくて自分が補うことが可能であれば、私がやってしまえばいいのだ。
その行動は彼らに響くかはわからないが、少なくとも口で言うよりも見せてしまう方が説得力はあるのではと思った。
そして、きつい言葉でもポイントを押さえていなければ言うことにした。
目の前の先輩に萎縮して、その先にいるお客様にご迷惑をおかけするのは本末転倒。
たとえ嫌われようが、守らなければならないものの前ではどうでもいいことだ。
だから、後輩である先輩でも面と向かって言うことにしている。
後で指摘の仕方に関する謝罪はしても、指摘したという事実を謝罪はしない。
本当に大事なものは何かということを意識すれば、自ずと答えは見えてくる。
今でも正直、毎日イライラすることはある。
自分ではカバーしきれない部分があることから、お客さまに対して申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
それでも、少しずつでいいから彼らの中の意識が変化することを祈る。
先輩としての道半ば、先輩という自分を日々アップデートさせていくべく、慢心せぬよう精進していきたい。