キッチンで男性の隣に立って料理をすること。
これはまるで、同棲をしているカップルのような距離感で、もしくは夫婦のような雰囲気でとても楽しかった。
誰かと料理をすることの楽しさはその時に知った。
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新卒で入社した会社では、入社してから半年間、研修期間が設けられていた。研修先は配属先とは別の事務所で、寮生活だった。
寮生活も残りわずかとなったとき、寮で行われた飲み会で男性の同僚と仲良くなった。
ある日夕食を一緒に食べようとなり、部屋間の行き来はある程度自由だったので、同僚のキッチンで料理をすることとなった。
その日あったことを喋りながら、同僚はハンバーグを作ってくれた。
彼は薄味が好きだと言っていて、私向けに味付けを調整したと言っていたのだが、味の濃さが絶妙だった。
私はお味噌汁担当だったので、いつも通り作っただけであったが、インスタント味噌汁を飲んでいる彼には、新鮮だったらしくいたく感動された。
彼は追加でおつまみにと言って、カシューナッツの入った豚肉の炒め物を作ってくれて、お店以外でカシューナッツの入った料理を食べたことがなかったのでとても感動した。
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寮を出てから、彼とは飲みに行くことはあっても、一緒に料理をすることはそれっきりないまま連絡を取ることもなくなってしまった。キッチンで会話しながら料理したあの時間だけが、楽しい思い出として残っている。
寮を出て一人暮らしをしていると、人のために料理をする機会がめっきり減ってしまった。そのせいで、自分のためだけに料理をすることも減ってしまった。
一人だと、誰も食生活を見て心配をする人がいないので、お惣菜で済ませたり、気力がないときは食べなかったり、ということができてしまう。
仕事が忙しい時期には、夜ごはんを抜くということをやっていたので、周囲に心配をかけてしまうほど痩せてしまったことがある。
健康に悪いだけでなく、肌や髪にも悪影響が出てしまったので、以降は全く食べないということはやらないようにしている。
日付が変わってからガッツリ食べるのも良くないと思うので、夕食の時間に夕食が取れるように仕事が終わればいいのにと思いながら、年度末の忙しい時期を過ごしている。
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このエッセイを書いていて、せめて休日はもっと料理をしなければならないなと思った。
仕事が忙しいことを言い訳にしていたが、体調などのコンディションが整わなければ、仕事もままならない。
食べたもので身体は作られる。
そのことを意識して、自炊の頻度を増やしたい。
実家暮らしをしていたときは、当たり前に母親が料理をしてくれていた。
今も実家に帰れば、普段一人暮らしで家事をがんばっているからと、手伝いすら拒まれる状況だ。
一人暮らしを通して、料理を作ることの労力は大きいことを知ったので、実家での家事協力も頑張りたい。
また、料理をすることが楽しいということに最近気づき、というよりも、私は料理をすることが好きだったのだということを思い出した。
願わくは誰かの為に食事を作りたいし、誰かが私のために作ってくれた料理を食べたいなと夢見ている。