2022年が始まってすぐ、新卒で入った会社を1年足らずで辞めた。
当時は、精神を病んでいたので辞めることが意識として先行していたが、心のどこかでは短期間で仕事を辞めてしまった自分自身が嫌いだった。次の仕事は決まっていたが、ただ仕事を新しく始めるだけでは、どうも腑に落ちない。
「なんでもいいから、何か一つ成し遂げたい」
そう考えた私は、1年以内に小説を書きあげるという目標を立てた。

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何故小説なのか。
とりあえず話を作り上げてみたかったのが一番にある。
そこの登場人物を自分に重ねて、逆境から立ち直る姿を描くことで、自分自身に元気を与えたかったのだ。
もともと、絵を描くことが好きだった私は、本来なら漫画を描きたかった。しかし、当時の私には絵を描きあげられる自信がない上に、働きながら絵を描く時間を確保するのも無理だと判断した。
なら、小説の方が、スマホさえあれば時間と場所を選ばず文章を書けるため、できるかもしれない。もともと文章を書くことも好きだったが、仕事で病んでからというもの、上手く頭が働かなくなり、頭に浮かぶ文章が拙くなった。そのリハビリも兼ねたい。
そう考えた結果、小説を書くという手段をとった。
途中で書くのをやめないために、ちょうど1年後が締め切りの賞を探し、それに出すつもりで書き始めて、あえて自分に負荷をかけた。
話の構想自体は、漫画で描きたいと思っていた話を使って、小説として話が成り立つように設定を変えて使った。

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初めは「くだらない内容でいいや」と思い、自由に書いていったが、次第に楽しくなってきて、細部にまでこだわり始めた。ストーリーの順番などは関係なく、書きたいところから書き始め、着々と物語を完成させていった。
書いている途中、仕事の繁忙期で執筆が滞ったり、構想がうまくまとまらずに3か月ほど全く書かなくなったりしたこともあったが、なんだかんだその後は着実に書き進めていったのだ。

気が付けば、目標を立ててから約1年が経過し、小説は、合計で約15万字もの長編になった。
きっと小説を書いたことのある人が私の書いた話を読むと、蛇足ともいえる表現や、シーンが多いのだろうと思っている。その表現自体も拙かったり、まだまだと言われそうな部分もあったりするだろう。
だが、私はそれでもいいと思っている。
期限の目安としていた賞にはせっかくなので応募しようと思っていたが、この小説はそもそも誰かに見せるために書いたものではない。
「私でも、何かできるんだ」と自分に言い聞かせたかっただけなのだから。もはやただの自己満小説である。

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このエッセイを書いている段階では、小説はまだ手直し中といったところだが、確実にゴールは見えている。賞の締め切りまでに書き上げられそうだ。
こんな風に、何かを目に見える形で成し遂げたというのは私にとっては大きな収穫になった。これから困難なことがあっても、1年間何かを地道に続けて完成させたという事実は、今後の私にとって大きな糧になるだろう。

きっとこの小説を投稿するというゴールにまで無事たどり着いたら、新しい自分になれそうな気がしている。
新しい私は、しっかりと歩み始めている。