私はときどき過去の自分へ手紙を書きたくなる。
少しずつ歩みを進めることができた今の私だから、1年前の私へ手紙を書こうと思う。

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1年前の私へ

1年前の私、元気にしてますか。
多分1年前の私は、当時付き合っていた人からホワイトデーでもらった手作りのマカロンに舌鼓を打っている頃だと思う。そのピンクと白のマカロン、すっごく美味しかったよね。
そしてそれをもぐもぐ食べる私を、作ってくれた彼がふにゃっとした柔らかな顔で笑ってくれて。その笑顔と彼の優しさが私は本当に大好きだったんだよね。

1年前の私が聞いたってきっと信じられないと思うけど、落ち着いて聞いてください。
その大好きだった彼とは数か月後に悲しいけれどお別れしてしまいます。
そして、自分がとてもとても大切に思っていた家族という存在も消えてしまいます。
きっと薄々、どちらも無くなってしまいそうなことに気付いているんじゃないかな。
マカロンを頬張った数か月後には辛くてとにかく苦しい時間を過ごすことになってしまうよ。

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幸せって何なんだろう。
家族って何なんだろう。
私が今まで信じてずっと大切にしてきたものって何だったんだろう。
私の存在って一体今まで何だったんだろう。

大好きで大切だった人達から死を仄めかされたり、自分の存在を否定されたりした私は色んなことをぐるぐると考えてしまって、苦しくて。今までの人生で理不尽な目に遭ったり、悔しい思いをしたりしても「なにくそ根性」で何度も立ち上がって来た私だったけど、こんなに自分の人生に絶望して投げ出したくなったのはこれが初めてだと思う。
だからしばらくの間は毎晩泣いて、それでも朝が来たら出社してハリボテの笑顔を張り付けて仕事をこなして、そのハリボテが崩れないうちに家に帰ってまた泣いて…という、毎日をただひたすらに消化する日々を送ることになるかもしれません。

苦しすぎて消えたくなると思う。人生辞めたくなると思う。
でも絶対に私は乗り越えられると思う。
だからきっと大丈夫。

何度も塗り固めたハリボテが修復不可能になった数か月後の私が無意識に赤信号を渡りそうになった時、ハッとして踏みとどまってじっとりとかいた脂汗。それが何より頑張って生きたいという証拠だと今の私なら思うから。
今は幸せいっぱいだと思うけど、それから数か月後にはたくさん心に穴が開いて、きっと穴ぼこだらけになると思う。だけど、その穴は私のことを大切に思ってくれるもう一つの家族や大切な友達、一人で過ごす時間が少しずつだけど塞いでくれると思うから恐れないで。そして何より妹が一番の同士でいてくれるよ。

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この文章を読んでいる私は想像つかないと思うけど、この1年で新しい検定資格も取得できたし、ずっと触れなかった猫と一緒に遊ぶこともできたよ。信じられないよね。
京都や東京にひとり旅もしたし、そこでは京都や広島の友達が新しくできるよ。
制限されて行けなかった舞台も、コンサートも、ちゃんと行くことができたよ。
家具だって一人で組み立てられるようになったし、投資も始めたから貯金額も目標まであと2割のとこまできたよ。もともと逞しい私だったけど、さらに逞しくなれた気がするんだ。

時間ができるとつい余計なことを考えて苦しくなってしまうから、ひとり旅の計画を立てて楽しいことを考えたり、自分の総資産を把握したりスキルアップのための資格を勉強したりして自分を奮い立たせたり。時にはエッセイを書いて自分の気持ちと向き合うことでその苦しさを一緒に乗り越えていこう。
それでもどうしても抱えきれない苦しみは、私のことを大切に思ってくれる人たちに少しずつ話して、荷物を軽くしていこう。きっとみんな、相づちを打ったり時には関係ないことで笑わせてくれたりしながらその荷物を引き受けてくれるはずだから。だからきっと大丈夫。

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この1年間で一進一退を繰り返しながら、本当にやっと穏やかに過ごせる毎日が最近は増えてきました。今まで後輩から食事に誘われたり、知人が友人を紹介してくれたりしても、一歩踏み出せなかった私だけど、最近になって親友が紹介してくれた親友の友達と連絡を取り合う勇気を踏み出せるくらいには少しずつ元気になってるよ。だからきっと大丈夫。

最後に。制限されて行けなかった大好きなバンドのメンバーが今年亡くなってしまって、今の私は色んな人の顔色を伺って自分を殺していた当時の自分の振る舞いや考え方に心底後悔しています。その行動が結果的に自分の大切にしている人たちのことも、自分のことも傷つけてしまっていることに早く気付いてほしくて手紙を書きました。
きっと苦しい状況がこれから待っているけど、今も完全には復活した私じゃないけど、少しずつ色々なことを時間が解決してくれるよ。だからきっと大丈夫。
1年前の私が少しでも後悔しない楽しい毎日を送れるように心から願っています。

1年後の私より