これは、かがみよかがみのリアルイベント参加当日に起こった、ちょっと笑える私の話。

2023年3月25日。天気は雨。かがみよかがみのリアルイベントに参加するべく、現在住んでいる栃木から東京へと向かう為、その日はいつもの休日よりも少し早起きをして身支度を整えていた。

今日は雨だから髪はしっかり巻いて、ハードタイプのヘアスプレーを使おうとか、天気が悪くて暗いから、メイクは濃くなりすぎないように気をつけようとか、3月下旬とはいえ今日は寒いから、雨でも歩きやすくて厚手の服で行こうとか、とにかく色々なことを考えながら準備を進めていた。

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なぜなら、私はこの日のイベントを心の底から楽しみにしていたからだ。楽しみすぎて前日眠れないなんてもんじゃない。もっともっと前から、正確に言えば、イベントに参加できることが決まった日から、常にドキドキとワクワクが私の心に棲みついていたのだ。

そうなると、自然に気合いが入る。待ち望んだこの日。私の今後の人生に大きな影響をもたらすだろうイベント。万全の体制で臨むべく、数日前から体調管理も今まで以上に気をつけた。身支度が全て済み、持ち物の確認と電車の時刻表を再度見返す。

よし、全部大丈夫だ、出発!と、勢いよく玄関のドアを開けた瞬間、あるものが私の目に飛び込んできた。虫である。それも、3cmはあるだろう大きさ。「ひっ!!」と小さく声を出すのも束の間、その虫はものすごい速さで我が家の玄関に侵入し、下駄箱の裏へと姿を消してしまった。あまりの速さに、どんな虫かも正確には判断できず、その場で固まってしまった。

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私は幼い頃から大の虫嫌い。どんなに小さくても触れない。家の中で虫に遭遇した際は、ほうきとちりとりを使って窓から外に逃していた。「もうウチに来るなよー!」という言葉と共に。いつもならそうするのだが、よりにもよって東京出発前の出来事。

それもヤツは下駄箱裏に消えて消息不明。さて、どうしたものか、と考えるも為す術はなく、「いってきます」と、いつもより弱々しい挨拶を下駄箱裏にいるだろうヤツに向けて投げかけた。

東京に向かう電車の中では、イベントへの期待より虫への恐怖のことで頭がいっぱいだった。「靴の中に侵入していて、知らずに履いてしまったらどうしよう」「布団の中に入ったりはしていないだろうか」どんどん膨らむ被害妄想。終わりなき恐怖の中で、突然閃く。「あぁ、そうか。今日は雨だから、ヤツは我が家に雨宿りに来たのか」と。

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我ながらなんて無理矢理なオチだろう、と電車で1人笑いそうになってしまった。でももしかしたら、私が帰る頃には勝手に出て行っているかもしれないし、更にもしかしたら、ヤツもしくはヤツの子孫が、今後の世界を大きく変えるかもしれない。虫にしては大きくても、世界から見たらちっぽけな虫に、私は何故今こんなにも悩まされているんだ?と更に笑いの波が押し寄せる。

「これから大事なイベントを控えているというのに、ある意味緊張感ゼロだな、私」と妙に落ち着いてしまった。その時思いついた。「あ、これ笑える話としてエッセイのネタにしよう」と。

その後、無事に会場に到着し、かがみすとの皆さんと楽しいひと時を過ごした。あのイベント直前に、私の頭の中が虫のことでいっぱいだったなんて、誰一人知る由もない。ちなみに、帰宅後ヤツは見当たらなかった。夜には雨が上がっていたので、やはりただの雨宿りだったのかもしれない。そうであってほしいと強く願う今日この頃である。